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日々の破片

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2005-12-05

_ 猫ねこネコの物語

子供の本を取り上げて読みふける(といっても短編集なのであっと言う間の話だが)。

猫ねこネコの物語 (児童図書館・文学の部屋)(ロイド・アリグザンダー)

モの字が一世を風靡したもんで、何を読んでもそういう目線になってしまうが、まあ、あれだ。この本に出て来る猫が、そろいもそろってモ。まあ、ネコだからな。

王女様は、マーゴット(ネコの名前−−引用者注)に感謝して、絹や宝石でその身を飾ろうとした。しかし、マーゴットは、わたしは自分の毛皮がいちばん好きなのです、といって、ていねいにことわった。(中略)しかし、おおぜいの王様達や家来たちを見るにつけても、ネコでいるほうがずうっとしゃれているわ、と心のなかで思うのであった。

で、児童書なものだから、ほとんどの人間様も結局はネコに説得されて正しい道を歩むというハッピーな物語たちである。子供の情操教育にはばっちりだ。正しいことは正しく、無理は無理。できないことはできなくて、できることだけができる。約束は守らなければならない。自由を守るために知性と理性を駆使し、誇りを高くもって無理せずに暮らす。

というわけで、とりわけかっこいい市場の相談役のバラカ(もちろん猫)の物語『≪だめ≫といったネコ』でも紹介するか。

あるところにシラ=ザール大王という王様がいる。王様なうえに周りを取り囲んでいるのがスマートな人たちだから、これまで「だめ」という言葉を聞いたことがない。なにしろ大王だから「朝食にハチドリの卵を落としたらさぞや元気が出るであろうな」と思いつきを口に出すと、料理人たちがすぐさまそれを作ってしまう。で、食べたらひどい下痢に襲われたり。

大王がいくら無理難題を出しまくっても、大臣や議会は臨機応変な頓知でもって応じてしまう。

かくして、大王はなんでもできる人間特有の病にかかる。つまり退屈というやつだ。退屈な人間はゲームに目覚める。かくしていろいろなゲームに手を出す。もちろんスマートな人たちが周りを固めているから常に大王は勝利する。次々といろいろなゲームをやっていく。

なにをやっても、大王はたいくつしてあくびをした。ただひとつだけ、大王を夢中にさせるゲームがあった。チェスである。これだけは、いくらやってもあきないで、毎日毎日、第一級の名人が呼ばれて、大王の相手をさせられた。そろいもそろって、利口で、抜け目のない打ち手たち、と同時に、その利口さとぬけ目なさは、うまく負けることも十分に心得ていた。

というわけで、国中のあらゆるチェスの名人を次々と負かしていった大王の相手がついに尽きてしまった。誰かおらぬか?

そこで、シャイファー広場にいる、ネコのバラカが呼ばれることになった。バラカは大王が負け知らずということは耳にしていたので興味しんしん。しかしネコだから、人間の名人たちが負ける理由までは知らない。そこで、そこまで強い大王との勝負にわくわくしてやって来た。

今まさに、大王がゲームを始めようとしたとき、バラカはまえ足をあげてこういった。

「正義の守護者よ、どっちが先手か、くじできめさせていただけませんか?」

バラカの大胆不敵な言葉をきいて、お付きの者たちのあいだにざわめきが起こった。

まあ、ネコは素直に王様先手ルールを認めることになる。

……勝負は勝負です。では、始めましょう」

ふたたび、大王が始めようとした。すると、バラカはまたまえ足をあげていったのだ。

「具眼の士よ、わたしのキャッスルがないのにお気づきでしょうね?」

お付きの者たちは、たがいに横目で見あい、総理大臣はバラカをにらみつけた。大王はしかめっ面をし、頬ばぱっと赤くなった。それでも大王は、しぶしぶ、なくなっていたコマを返した。

ここは、おもしろいけど、ちょっと大王はせこいし、誰がそんなワザを教えたんだか。「具眼の士よ」というバラカのセリフを書きたかっただけと違うか?

で、ネコだから全力投球する。王様はびっくりし、汗を流し、爪を噛み、かって経験もしたことがない状況に追い込まれる。権力の発動が必要だ。

そしてあと一手で自分の負けになるのが、はっきりと見てとれた。

「まった! さあ、盤の位置の交換だ。わしがおまえのコマを動かし、おまえがわしのコマを動かすのだ」と、大王は命令口調でいった。

「おお、法の獅子王よ、それはできませぬ。やはり、勝負は勝負ですからね。勝負の最中に席を替えるのですか? とんでもない、だめです」

≪だめ≫という言葉をきいて、お付きの者たちは恐ろしさで息がとまった。

(略)

しかし、大王は首をかしげただけで、ぽかんとした顔でバラカをちらっと見やっただけだった。

「ネコよ、おまえがいま口にした、その奇妙な言葉は、なんだね? ききなれぬ発音だったな。だみとか、だむとか……」

「ただの、≪だめ≫です。もう一度おなじようにいいますと、≪だめ≫」

「おもしろい。その変わった言葉はどこの国の言語で、どういう意味じゃ?」

で、たくさんの学者が動員されてきて言語学的に≪はい≫の意味だとか、動物学的に咽喉の構造から≪はい≫をネコは≪だめ≫と発音するとか、哲学的に逆説になるとか、いろいろな理屈を大王に教えることになる。そのたびに、ネコは不思議そうな顔をしては、「≪だめ≫はだめですよ」と、学者たちの解釈を否定する。

「(略)おまえたちは物理学やら哲学やらをごちゃごちゃならべたてたが、盤の位置はもとのままではないか」

と、大王は大声をはりあげた。

「不屈の知性よ、ようやくおわかりのようですね」と、バラカはいった。

この王様はべつにそれほど悪い人間ではない。だからいきなりネコを火あぶりにしたくなっても一応は考え直して交渉することにする。

「もし、おまえをたぎった油のなかに投げ込まねばならぬとしたら、おまえにとってどんなに悲惨で不愉快なことになろう。たかがチェスの試合のために、な? なんのかんのといってみても、これはゲームにすぎぬ」

「おおせのとおりで」と、バラカはいった。「しかし、世界最高の好勝負ですよ」

「たとえそうだとしても、国王としてのわしの務めや高級な仕事にくらべれば、こんなことは小さなことだ。とるにたらぬ、つまらぬ、一瞬たりとも考えるに価せぬことじゃよ」

「もし、そうなら、大王様は、なぜつまらぬことにこだわるのですか? どちらでもおなじなら、盤はちゃんとしといたほうがいいですよ」

さらに、おどしたり頓知(盤の位置を替えるのではなく座席を替えようとか)を出したり、いろいろするが、ネコにはまったく理解できない。ついに、王様は、最後の交渉に入る。

……シシカバブにしてしまえ!」

「おお、慈悲の大河の王よ」と、バラカはいった。「好きになさるがいい。ただ、ひとつだけ質問させてください。わたしをシシカバブにしたところで、勝負が変わりますかね?」

大王はちょっと返答に窮したが、こう反論した。「だが……だがな、もしもわしが勝つとしたら……」

「勝つ?」と、バラカは問い返した。「輝かしき先手の誇り高き名人よ。それではお聞きしますが、いつもいいなりになる者を相手にして、大王様は心からご満足なのですか?」

さすがに、ことここに至ればネコにも事情はわかる。問題領域は大王の退屈で、そのソリューションは1つしかない。それに大王はさすがに大王であり、ネコの理屈の正当性を認めることになる。

それにしても、「不屈の知性よ、ようやくおわかりのようですね」というセリフを一度は使ってみたいものだ。

_ dRubyのドキュメント

PB memoの人

今月号のるびまの記事を読んでると、勝手にドキュメント書くのはだめと言われているようでなんかしょんぼりしてしまうのですが、dRuby や DIV のドキュメント不足(?)はまだ解決とは思えないので、せめて DIV のソースにコメントをもう少し……

って書いてるけど、るびまのって英語でドカーンと来るから見られないよ〜って意味だよね?

咳 でも苦情系はまだよくて、「RDoc 書いたから読んでくれ」っていうのが凄い困って。膨大な文書が来るんですよ。でも読めるわけないじゃないですか。

一同 (笑)

咳 だから、返事書いてないですけどね。

一同 (爆笑)

と僕は思うので、書いてもいいんじゃないかな。書いてくださいよ(というか、るびまに投稿すれば解決じゃんとか)。

本日のツッコミ(全10件) [ツッコミを入れる]
_ (2005-12-05 22:34)

そうです>英語。

_ (2005-12-05 22:42)

編集前の書籍の内容はほとんどwww.druby.orgで読めるんですけどね。あとどうすればいいんだろう。雑誌?

_ (2005-12-05 23:08)

肝心なことを忘れてた。ドキュメント歓迎です!!

_ arton (2005-12-05 23:25)

>ドキュメント歓迎です!!<br>PB Memoの人に書いてよ〜

_ rucila (2005-12-06 23:30)

こんにちわ、PB memo のものです。<br>> 編集前の書籍の内容はほとんどwww.druby.orgで読めるんですけどね。<br>というのは知らずに書いてました。すみません。<br>るびまのはこれを送り付けた本人が読んだらへこむだろうなぁと思ってたんですけど、英語でしたか。

_ arton (2005-12-06 23:55)

はじめまして。rucilaさんでしたか。日記名で呼んで失礼しました。<br>>英語でしたか<br>なので、日本語ドキュメントは良いのではないかと。<br>ただ、それはそれとして日本語のページも彼らは機械翻訳で結構読みに来ているように思えるので(rjbのページとかから考えると)、ニュアンス抜きで機械翻訳されたのを読めばそれは相当へこむとは思います。読めないなら読めないで返事は出した方が良いと思いますよ。>咳さん

_ (2005-12-07 00:35)

はい。ちょっと前に返信済みです。不義理なことをしてしまったなあ。

_ y-Aki (2005-12-07 07:12)

amazonへのリンクのタイトルの後ろに/titleというのがついているのが気になる

_ arton (2005-12-07 09:11)

確かに。以前書影が取れなくなったときに適当に直したつけが回ってきてますね。<br>優先順位が高いのを片付けたら直します。

_ arton (2005-12-07 18:22)

<a href="http://sho.tdiary.net/20050914.html#p01">ちゃんとアナウンスが出てたのか</a>、と直してから調べたりして。面倒だったので(.*?)(<\/title>)?$に野良修正。


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