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日々の破片

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2011-11-27

_ ルサルカ

アントニン・ドヴォ(ル)ジャークというように記述するのが正しいらしいが(ル)というのは省略可能を意味するのか、()に入れて書くのが正しいのかわからんな。

そんなドヴォルザークのルサルカを観に新国立劇場。当然のように初見。ほとんど満席状態。

で、これがなんとも微妙なオペラだった。

まず、音楽はそれは美しい。1幕の月にルサルカが人間になりたいわーと祈る歌の美しさときたら、あらゆるオペラでもトップクラスの歌じゃなかろうか。聴いている最中はしびれまくる。でも、全然記憶に残っていない。

そもそもの前奏曲にライトモティーフがいくつか出ていたらしいのだが、ライトモティーフをそれと認識できなかったし。

森の精3人組が水の精をからかう箇所は、まるでラインの乙女がアルベリヒをからかうところのように楽しげで美しい(水の精はアルベリヒとは相当違って、多分、トトロのように心優しいやつっぽいけど)。が、ここも音楽はなんかラインの乙女のようだったが……というような記憶しかない。

3幕、王子が死の接吻を望む箇所もやはり美しいのだが、これまた終わった瞬間にきれいさっぱり忘れてしまった。

覚えているのは、美しい(長調の)メロディーを歌う。終わった瞬間に短7度(9度かも)の全奏で叩っ斬って気分を変えるパターンが頻出すること。

おれの聴き方が良くなかっただけかも知れないが、交響曲のような絶対音楽と違ってオペラについては娯楽前提で刹那的な作り方をしたんじゃないか、という印象を受ける。演劇的な作りについても、なんかしんねりむっつりし過ぎている1幕(魔女の~ババが魔法の薬を作るところはおもしろそうなのだが、相当退屈した)、快調な料理人のかけあいから入るのは良いが、あっというまにドロドロしてしまいあとはずっとうっとおしく続く2幕あたりは、なんじゃこりゃという感じがある(2幕の最後の「一人で地獄へ行きな」は良い。最初の「二人とも不幸にしてやるわ」もおもしろい、つまり公女の悪者っぷりは良い感じだ)。3幕になると、森の妖精と水の妖精のたわむれっぽいやつと、ルサルカの悲嘆、ババのおどろおどろしさ、料理人のかけあい漫才、王子の独白、二重唱と変化に富むので十分におもしろいのだが。

ただ、とにかくもメロディーの美しさや、音色の美しさ、特に3幕の始めのあたり(―中間かも)で、弦に木管を重ねてしばらく(全然思い出せない楽想)が続くあたり、は見事なものだ。もしかすると、何度も観れば異なる印象を得られるかも知れない。が、それほどまでして観るほどの作品ではないという気のほうがする。

ルサルカは蝶々夫人の人、きれいな声。料理人はこういうオペラだけに得な役だけど、それにしてもテンポも動きも良かった。オーケストラは2幕の最初が、聴いていて引っかかったが(金管が長く吹きすぎているような箇所があったが、そういう曲なのかも知れない)悪くはない。特に3幕は良かったな。

演出は女の子の夢という額縁を用意したもの。(それが本来の演出なのかも知れないけど) 最後、バレエ人形を床へ捨てて、兵隊の人形を窓枠へ飾る。ルサルカは水底へ、王子は天上へということかなぁと子供が言う。たぶん、そうなんだろう。

まあ、観られて良かったとは思うが、もっと観たいものがあるというところだ。

DVDはルネフレミングのが出ているが、はて。

ドヴォルザーク:歌劇《ルサルカ》パリ・オペラ座2002年 [DVD]

ルネフレミングって肉感おばさんという感じで、公女には向いていそうだけど、口もきかずにぼけーと歩いているだの夢遊病の女だのと城の人に陰口たたかれているルサルカという感じはしないけどなぁ。シェーファーとかだと良いかも。

_ おお、銀色に輝く月よ

ふと、iTunesをdvorakで検索したら、上で最高に美しい曲の1つとか書いている月に祈る歌は手元にあった(昨日までは再生回数0だったけどな)。

40 Most Beautiful Arias(40 Most Beautiful Arias)

6分以上ある長い曲だが、舞台ではあっという間だった。それにしてもこれは美しい(が、記憶に残っていないのもわかる)。

このアンソロジー、ちょっとバカにしていたが、most beautifulに嘘は無さそうだと感心した。しかも安いから、最初に手を出すオペラのCD(BGMとして利用してもOK)としてはいい線をついているなぁ。

_ 天才の欠点

ドヴォルザークは、ブラームスによれば、なんか美しいメロディーが欲しいなぁと誰かが言えば、お安いご用だといってさっとポケットから取り出してみせることができる男らしい。書斎のゴミ箱をあされば普通の作曲家が一生食いっぱぐれないだけの楽想があふれかえっている。

まるで、関羽みたいだ。顔良の首を取れる男はいるか? と訊けば、ほいどうぞとポケットから取り出す。華雄を討てる男はいるか? と訊けば、ほいどうぞとポケットから取り出す。

そういう男の致命的な欠点は、次々と湧き出す楽想を全然大事にしないことだ。だから次々と楽想が湧いては消えていき、二度と出てこない。そのせいで、なんかきれいな曲なのに、まったく印象に残らない。その場限りで流れて消えていくからだ。つまるところgistに山ほどコード片が登録されていくようなものだ。交響曲のようにフレームワーク(たとえばソナタ形式)があれば良いのだが、劇音楽だとそれがあまりに緩すぎるので欠点となる。

たった4個のタタタターンで30分の曲を作る男との違いだ(こっちはこっちで構成の大天才なわけだが)。こちらはgithubにきちんと構成されて残るし、共通で使えるものがモジュールとして残り再利用できる。そのためフォークもするしプルリクエストもできる。

_ ネトレプコのバージョン

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_ kdmsnr (2011-11-28 03:31)

gist/githubのたとえはいいですねえ。


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