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日々の破片

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2013-10-05

_ 14000年前の遺伝子工学

なぜ、人類の歴史に王が生まれたのか、疑問だった。

強い奴が支配するというのは理解できる。臂力並外れた男が群れを率いるというのは、群れを力でねじ伏せ、他の群れとの戦いに勝利し群れを大きくするのに有利だ。猿山のボスに見られる。あるいは、交渉力に優れた奴が支配するというのもそれなりに理解できる。群れをまとめ、他の群れと交渉して併合し大きくするのに有利だ。あるいは技術力に優れたというのもあり得る。優れた農耕技術を持つとか、土木建設の設計能力があるとか。交渉力や技術力による支配であれば、それこそ人間だ。

しかし、どちらにしても、まずは平和的であれ闘争的であれ下剋上となるはずで、万世一系のような概念が出てくるとは考えにくい。

中国の歴史を紐解けば、三皇五帝がまさに優れた後継者へ禅譲する歴史だ。その間に農耕が始まり治水が始まり集落が形成される。そして夏になり殷となると王による一系支配となる。なぜ突然、一系支配が出てくるのだろうか?

所有の概念の誕生によるのだろうか? しかし、その場合においても、一系支配にそのまま結びつくとは考えにくい。なぜならば、子供が親の所有物を受け継ぐという概念は別だからだ。

さらには、ごくごく一部の例外を除き、なぜ主たる一系は母系ではなく父系なのだろうか?

ロイドの137億年の物語を、毎朝、朝飯を食いながら少しずつ読み進めている。先日、宇宙の歴史を1日に換算したところで、23時59分59秒過ぎのあたりまでやっとたどりついた。

今から、14000年前、氷期が終わりナトゥーフ人が住む地中海沿岸は乾燥しきった。そのため植物は枯れて、動物が死ぬ。しかし一部のイネ科の植物が残った。ナトゥーフ人は生き残ったイネ科の植物を切り盛りするようになった。農業の始まりである。と同時に遺伝子工学の始まりでもあった。イネ科の植物がこれによって改良され始めたからだ。それをナトゥーフ人は理解した。しかもイヌを飼い始めた。とは言っても最初はイヌではなく、オオカミだった。これも遺伝子工学だ。以後数1000年かけて、ナトゥーフ人たちは家畜としてのヒツジとヤギを作り出した。

ところが、イヌの飼育以降、新たな事象が発生する。乳児死亡率が高まったのだった(発掘された墓の1/3が8歳未満の子供なのだが、本来、哺乳類は子供の死亡率を減らすために妊娠期間を長く取り、餌を取らずにすむように哺乳するように進化したために、そこまで乳児の死亡率は高くないものらしい)。

ロイドはあっさりと、

その子たちは、動物の病気に感染した最初の犠牲者だったのかもしれない。もしそうだとしたら、新たな「人間の選択」がはじまったころになる。つまり、このような新しい病気に罹りやすい人が死に、罹りにくい人が生き残ったのだ。

と記述している。

137億年の物語 宇宙が始まってから今日までの全歴史(クリストファー ロイド/Christopher Lloyd/野中 香方子)

2m超えの大年表も出ているのか。

ビジュアル大年表 137億年の物語(クリストファー・ロイド/野中 香方子)

そこで、最初の疑問におれは立ち返る。

イネや家畜に対して原始的な遺伝子工学をふるった連中だ。

たとえば、Aさんの子供は全部で10人いて、10人とも元気に成年したとする。

ということは、Aさんの子供と一緒になって子供を作れば、その子供も元気に成年する可能性が高い(というようなことを、家畜や植物に対してやってきたのだから、そう考える高い蓋然性がある)。

かくして、Aさんがその集落での王となる。王子あるいは王女を残して残りは貴種混交に使われる。

王の意義は遺伝子の提供にある。

すると母系ではだめだ。うまくしても1年に1人しか生産できない。しかし父系であれば、集落全体に遺伝子を提供できる。

となると、その王の遺伝子を管理する人も必要となる。王の存在価値は遺伝子の提供である以上、それ以外の生産行為(農作業や家畜の世話)のように危険が伴う作業をさせるわけにはいかない。

かくして、貢物が生まれる。それを管理するために、僧侶のようなものが必要となり、最終的に宗教が生まれる。王は獣の神の子孫であり、尊い血が流れているといった、神話が生成される。

そこまで考えて、唐突にY染色体がどうたらというような話は、そういうレベルの話であり、正しく王の存在意義を評価しての物言いだったのだなと気づいた。それにしても失礼というか無礼な話だなと、21世紀に生きるおれには思えるのだった。


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