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日々の破片

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2013-12-12

_ 君は猫目小僧を見たか

なんかはてぶから飛びまくっているうちに、アニメの黒歴史まとめみたいなところに突き当たって読んでみたが、甘い。

∀みたいにシャレを利かせた書き込みはあるし、うむそれは確かにとうなずけなくもない桃太郎海の神兵(これ、確かに兵器であり、敗戦後にGHQによって封印されたのだから、∀の意味でも黒歴史と言えなくはない。観ていて感動的なのは、ニューギニアだかポリネシアだかの原住民に、犬とか猿とか雉が日本語教育(というか、皇国臣民化教育)を一生懸命施すところの、実に楽しそうな良い風景なのだが、もちろん、飴よりも鞭の大日本帝国のことだから、現実は腹減って肉食ったり食われたりになってしまうんだよなぁ)もあるが、たかだか作画が崩壊していたり、視聴率が取れなかったり、原作とは異なる観点からアニメ化したりしている程度のスケールの小さなやつをグチグチあげつらっているだけだった。ピカチューのポリゴンぴかぴかは、メトロン星人が内容を差し換えて子供を操作するために放映したならばすごい事件だが、多分単なる事故(問題になるとは気づかずにやってしまった)なので、これも違う感が漂う。

アニメの歴史で黒歴史と言ったら、その制作手法をもって、猫目小僧以外に無い。

つぶやきシローの映画ではない。

猫目小僧は今を去ること40年近くか以上か前に、少年画報に連載されていて、家では買っていなかったので、友達の家で読むくらいだったが、実に陰惨極まりない、当時の楳図かずおならではの、それはそれはおっかないマンガだった。

何しろ猫目の小僧なので、行く先々で差別される。しかも不幸が身についているので、コナンの如く出歩けば事件にあたり、事件にあたれば、よそ者の不気味な顔つきの小僧だということで、村人たちに山狩りされてリンチされて、それでもどっこい生きていくあー人生は辛いよというようなお話で、なんで放浪しているかといえば、確か、まだ見ぬ母親が恋しくて探しているというような、物悲しい背景があったような。母親が人間なら父親が猫又なのかな、そのへんは覚えていないというか、ちゃんと読んだわけではないのでわからないが、とにかく読めば、必ず村人に追っかけられているか、捕まって拷問されているか、腹を減らしているかのどれかだ。

問題は、それがアニメ化されることになぜかなったことだった。

おれは狂喜した。それまで、飛ばし飛ばしに友達の家で読むだけだった、あの奇怪極まりないマンガがアニメになる。つまり、全貌を観ることができる。

しかも、期待を高めるための事前の宣伝ががんがんある。

世界で最初の特殊な手法を採用した画期的なアニメだということなのだ。

なんかわからないが、すごい!

さて、最初の放映日、おそらくおれと同じように、少年画報を読んでいない(注:当時、講談社のぼくら、少年画報社の少年画報、冒険王といった、少年用マンガ月刊誌は、完全にすたれていて、ふつうの購買対象ではなくなっていたので、連載をちゃんと読んでいる子供はごくまれだったはず。少女マンガのリボンは随分長く生き残っていたし、花とゆめのような新規に参入するものがあるのと好対照だが、なんでだろう? と突然不思議になったけど、余談)おっかない系大好きな子供たちは胸を躍らせてテレビの前に座ったに違いない。当時だって楳図かずおはビッグネームで呪いの猫面だの、笑い仮面(これも少年画報だが、1巻ものの単行本が出ていたので、みんな読む。すごい兵器を開発した科学者が、あまりの威力に恐れをなして軍部への協力を拒んだために、笑い仮面という鉛の仮面を顔に溶接されるという刑(想像するだけで熱そうだし苦しそうだしでとんでもない話だ)を受けるのだが、脱獄する。しかし頭がすっとんでしまったために、恐ろしい復讐劇が始まるというようなお話だったと思うがどうなるかは忘れた)だのは知っているのだ。

はじまった。

え?

口あんぐり。

確かに、特殊な手法を採用した画期的なアニメだった。

昭和初期の話に聞く紙芝居というメディアを彷彿させる背景の画がある。

その手前を割り箸に紙で書いた人間を貼り付けたようなものが、水平に動いていく。

え? 割り箸人形劇?

おれは相当辛抱強い子供だと思うが、最初のCMが始まるまでの15分を我慢できずに観るのをやめたのを覚えている。

その後、特に友達の家で途中まで読んで続きが気になっていたエピソードの回だけは、結末が知りたくて観ようとして、そして途中でやめた。

おそらく、あらゆる意味で、猛烈にコストダウンできる革命的なアニメ手法だと思うが、その後、その技術を採用した作品が出てくることはおそらくなかったはず。

こういった、画期的な技術の封印がなされたものを黒歴史と呼ぶのだ。

(原作は読みたいような今更読む気はしないような)


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