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日々の破片

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2013-12-17

_ 軍と政治

北朝鮮の動きを見ていて、おもしろいなぁと思う。

共産主義、独裁、粛清と3拍子揃えば、歴史的には最初の向共産主義国家(途中からふてぶてしく共産主義を名乗ったけど)のソ連を考える。

でも、これはずいぶん違った。

最初の内戦状態の間はともかく、ボリシェビキ独裁が確立して、最初に粛清(この時点では国外追放だけど)されたのは、赤軍創設者にしてペトログラード占拠の立役者のレオン・トロツキーだった。ソ連での最後の一時期、あまりのスターリンからの圧力を見るに見かねたオフセエンコが、赤軍はあなたと共にある、一緒に戦いますか? とクーデターを示唆したらしいが、民主主義(=多数決)には従うよ、と莞爾として追放を受け入れたらしい。

十月 [DVD]

(もちろん十月はスターリン以降の作品なのでトロツキーは日和見主義者として一瞬登場するだけとなっている(いなかったことにするのが、粛清の第一歩で、北朝鮮の張も拍手する姿が抹消されていることから粛清されたらしいとわかった。100年たっても手法は変わらない)。が、十月はレーニンとトロツキーが主導したのは間違いなさそうだ。映画の中で冬宮への突撃を指示しながら先頭を踊りながら進む隊長として、帽子とひげ、メガネのおっさんが出てきて、トロツキーとして撮ってあとからオフセエンコということに変えたのかと思ったが、その後、オフセエンコの写真を見たら、やはり髭メガネなので、良くわからない)

その後も、スターリンと仲間たちは、カーメネフやブハーリンといった政治家を粛清するが、その一方で、オフセエンコ、トゥハチェフスキーといった軍人も着実に粛清していく。バルバロッサ作戦に対抗するために、あわや粛清寸前のジューコフをスターリンがすんでのところで呼び出すところは興味深い。クーデターを恐れるあまり、有能な軍人はほとんど殺すか殺しかけていたのだった。「おや、君は爪がないようだね」とスターリンは何食わぬ顔でジューコフに語り掛ける。

モスクワ攻防戦――20世紀を決した史上最大の戦闘(アンドリュー・ナゴルスキ/津守滋/津守京子)

一貫して、ソ連は政高軍低に見える。

これは中国も同じで、軍が主導権を持つことはないように見える。朱徳ですら文革の最中は閑職に追いやられていたし、彭徳懐にいたっては文革中に虐殺されている(そもそも大躍進の責任を被せられている)。

権力闘争の過程で政治家同士が粛清合戦をするだけでなく、クーデターを恐れて軍人を粛清していくというのはパターンなのだ。

が、北朝鮮は違う。粛清の歴史を見ると、金一族とその取り巻きの間の粛清合戦はあるが、軍はいつでもそれを冷徹に見ているように見える。生粋の軍人が粛清されている様子がない。

なぜだろう。

理由は一つしかない。クーデターがあり得ないからだ。

なぜクーデターがあり得ないかといえば、すでに軍事政権であり、実質的な国家の主権は軍にあるからだ。

そう考えると、なぜ、金一族の世襲というわけのわからない制度が三代も続いているのかの説明もつく。金一族は国家独立の象徴に過ぎないということだ。すると、最も顔はおっさんくさいが聡明さではずば抜けていそうな正男や、軍と友好な関係にあると言われていた正哲でなく、正恩に決まるのも象徴としての意味合いからは納得がいかなくもない(正哲はもともと軍との関係が良いので軍政統一の役としてはバイアスがかかっている)。

などと想像したりするのであった。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ usa (2013-12-18 00:15)

古代ローマにはダムナティオ・メモリアエという刑がありまして、100年どころか2000年経っても変わってない。

_ arton (2013-12-18 00:49)

刑を下したという明白な記録があるぶんだけ、_.メモリアエのほうがましなんじゃないかな。


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