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日々の破片

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2014-05-07

_ 鍼灸師海を渡る

パーデレ・ゴンザレスは瞠目した。

御薗意斎はエスパニアのどの審問官よりもうまく針を打つ。打たれた男は血の一滴すらたらさない。表情は良く見えないが呻き声が聞こえてこないのだから苦痛もないに違いない。

常心殿、この男は魔女ですかな?

パーデレ・ゴンザレスは十字架を目の前に掲げて一歩ひきながら尋ねた。

はて、魔女とは? この男はただの患者ですな。

御薗意斎は小槌を振って男に太い金の針を打ち込みながら答えた。

常心殿、実際のところヤパンのその男が魔女だろうが第六天魔王だろうがどうでも良いのです。ぜひ、わたしと一緒にエスパニアへ来てください。教会には先生のお力が必要なのです。先生のお力をお借りすれば、すべての教会の敵を魔女として火あぶりにできるのです。

ふむ、それはなぜですかな?

魔女には針を打たれても血を流さず苦痛を感じない悪魔との契約の徴が体のどこかにあるのです。われわれはそれを探すために、大変なご苦労をしているのです。探されるほうも大変でございましょうが、探すこちらも大変でございます。今、先生は即座にそれを見破りました。それこそわれわれが求めておるものです。先生のその鍼術があれば、何万人もの魔女を1か月のうちには全員火あぶりにできるのですぞ。

くだらん、人中いたるところに経穴あり。おまえさまの言うことは、すべての人間は悪魔と契約をしておるとのことですぞ。

わたしどもといたしましても、身内のもの以外はすべて魔女として火あぶりにできればとてもお幸せでございます。では、なにとぞよしなに。

御薗意斎は宮中の勤めもあることから、弟子の玉毛取斎をパーデレ・ゴンザレスに預けることにした。この男が後の大審問官トマス・デ・トルケマダである。


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