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日々の破片

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2014-12-25

_ お江戸の猫マンガがおもしろかった

子供が、Kindle版で良いから猫絵十兵衛を買えと言う。なんだそれ?

アマゾンで見たら、巻数が多い。渋っていたら、クリスマスプレゼントだからドーンっといってみようとか言うし、まあいいかとKindle版で出ている限りを全部買ってみた。

で、子供が読み終わった後、おもしろいから読めというから読んでみた。

いまいちかわいくない(というか不貞不貞しい)猫の画だなとか思いながら読んだらこれが滅法おもしろかった(なぜか猫は江戸時代風、人間は現代のマンガ風な書き方をしているっぽい)。

舞台は江戸時代、場所はほとんど江戸(たまに長崎)、主人公は猫の画専門の流しの画師で髷は結わずに現代人っぽい(ので妖術師扱いされるというネタまであった)。いつも背中に箱を背負っていて、その中にタヌキのような猫を入れている。

売り物はネコの画といっても普通の画じゃない。貼ればてきめん、家の中のネズミは逃げ出し向こう一年間はネズミが寄り付かないというご利益たっぷりの猫の画だ。

当然、背中の箱のネコもただの猫ではない。元は長崎の猫仙人、峠を通る旅人を脅かしては楽しむという趣味が悪い猫又だ。

という二人を狂言回しに、80%が人情もの、残りが江戸うんちくもの(田舎には猫がいないので、猫そのものを売る商いがあったとか)とお笑いもの(というか、人情ものであってもベースとなるのはお笑いものである)で、言ってはなんだが同工異曲、しかし実に味がある。あっという間に滂沱の池にはまる。人情話というのはくだらないとは思うが、それでも仕掛けがそれなりにあるので楽しめた。今となっては長谷川伸よりははるかに読ませる。

猫又は正体がばれたら人のところにはいられない、という条件をつけているので、飼い主が大切にしている飼い猫やら、主人思いの猫やらと、最後は別れることになるというパターンがやたらと目につくうえに、猫を飼う身で加齢による涙腺の緩さがあいまって、読んでいると自然と涙が止まらなくなるものが多いのは癪に障るが、まあ悪いものではない。さかまつげの時はひとつふたつ拾い読みするとちょうど具合が良かろう。

ともあれ大人買いの楽しさで、1巻の花魁と三毛猫の別れ話のいまいち感が、同工異曲の猫別れでも、2巻の和尚と片目縹色(またわざわざ古い色名を持ってきたものだと微笑ましく思う。薄い藍色のことだが、先頭で青い眼だと通りすがりの人間に説明させているのは作者の親切なところなのかも)になるとえらく絵とセリフ回しが上達している分より別れは辛く(しかし後味は悪くなく)、さらに5巻の隠居と野良猫では話もえらく洗練されて別れの辛さはまた格別、なるほど継続は力なりと感じられるのがおもしろいところだった。

猫絵十兵衛 ~御伽草紙~(5) (ねこぱんちコミックス)(永尾まる)

とは言え、長谷川伸も嫌いではない。

股旅新八景 (文庫コレクション 大衆文学館)(長谷川伸)


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