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日々の破片

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2015-08-24

_ 死せる王女のための孔雀舞

題名から衒学的でちょっと恥ずかしいっぽいし、SFでもないので出た当時は完全にスルーしていたのだが、金星樹と一緒に買ってみて(どちらかというと目当てはワン・ゼロの習作らしい夢喰いだったのだが)、読んで完全にノックアウトされた。

大傑作だった。もしかすると佐藤史生の作品の最高峰かも知れない。

雨男、死せる王女のための孔雀舞、さらばマドンナの微笑、我はその名も知らざりきの4連作だ。

雨男は相当辛い性格の女子高生(最初は書き方もあって中性的なのでなんだかよくわからない)が荒れ果てた庭をスケッチしているところに青年がやって来て、二人の過去が浮かび上がってくるという微妙な心理を描く妙な作品。かっては天才少女だったが、それを封印したおかげで普通の子供として振る舞えるようになり、でもその代わりに才能は失くしてしまったというそこだけはわかりやすい設定。

それが一転次の死せる王女のための孔雀舞で従妹がイギリスからやって来て心理ホラーとなる。次々と判明する新事実。とはいえ収拾が付いて、1作目で過去との折り合いがつき、2作目で家族との折り合いがつく。

で、3作目を読むといきなり雰囲気が変わり、ここから別の物語になるのだなと思う間もなく同じ女子高生が出てきて、おや連作の3作目かと驚く間もなく孤独な魂が共鳴する女子高生同士の友情の話になるのかと思いきや、もっとどろどろした話に入り込んでいく。

そして4作目となり(今度は最初から続きとわかる)、大学進学を前に雨男との関係が曖昧なまま、家族の友人の私塾を営む助教授が出てくることでまた新たな世界が見えて人間関係の見直しがやってくる。ついに主人公の恋の話になる。しかしそれは当然のように感じるそのままではない。分析して理解して許容して解放される。そして比較的幸福な未来が見えかけるところで終わる。

幸福になってもらいたいなぁ。

1981年から1982年に今は亡きグレープフルーツという雑誌に発表された作品。

つまり、あの1980年代はこの作品によって始まったということだ。

死せる王女のための孔雀舞 <佐藤史生コレクション>(佐藤史生)

当時は読まなかったが、今読んでも十分に間に合った。

一方、元々の目当てだった夢喰いは、本人の習作というよりも、読者が着いてこられるかの観測気球なのかな程度の作品だった。

それにしても、雨男(これでは単行本の題にはならないので、どこまで最初は本気で連作を作る気だったのか謎だが)の連作は素晴らしかった。

Ravel: L'œuvre pour piano(Jacques Rouvier Théodore Paraskivesco)


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