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日々の破片

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2015-09-18

_ ビッグデータコネクトを読んだ

以前買ったままになっていたビッグデータコネクトを読んだ。

最初のうちは、警察が気分悪すぎてなかなか読む気になれなかったが(加齢のせいか、どんどこ非純粋な悪意、つまりは愚鈍ということだが、を持った登場人物が出てくる作品を読むのが辛くなってきた)、1/3くらいから(あまりにたくさんの愚鈍な警官――まるで愚鈍なことが警官の条件のようだ――が次々と出て来たせいで、2番目のやつが回りの愚鈍さに圧倒されて多少はスマートに振る舞えるようになったのが大きい、とまるで作品内の時間軸の動きによる登場人物の心境の変化に連動しているのが我ながらおもしろい)はそれほど気分も悪くならなくて気付いたら読了していた。

ビッグデータ・コネクト (文春文庫)(藤井太洋)

気付いたら読了していたくらいだから、おもしろいはえらくおもしろい。

多少は2010年代の事件とシンクロさせていて、技術者倫理と仕様が機能ではなく情実で決定される大規模開発の困難に、殺人とか情報保護のありようだとかの論点と、監視カメラ(ここだけはIoTかな)と住基ネットと企業横断型会員カードを結合させたデータベースと、監視することが正義という考え方や、女性が自立可能な職業とはとか、戸籍に利用される文字コードであるとか、マスコミの取材の社会的な効用と世論を誰がどう利用するかなどの論点をえいやと混ぜ合わせてかき混ぜて出しましたみたいな内容だから、出てくる愚鈍な人物の気分悪さにさえ我慢すれば、そもそもおもしろい内容だ。

ただ、最後の最後のオチをなぜそう選んだかという不可解さと、その直前のオチの極端なくだらねぇ感は感心できなかった。オチがくだらないから最後の最後のオチに不可解感を入れて帳消しにしたのかな。

つまり、悪徳警官というのは存在しないし(善意なのだ)、悪徳官僚というのは存在しないし(心からの善意なのだ)、悪徳企業というのは存在しないし(彼らは仕事をしているだけなのだ)、と、調整をした結果、愚鈍という罪だけでは出資金の出しようがないので、なんとなく責任をおっ被せても世論的に問題無さそうなところを落としどころにしたみたいな、政治的決着な物語で、ここまで含めたメタ構造なのかなぁと首をひねるのが最後の最後の不可解なオチなのだった。

# わざと事実としての歴史の刻印を入れたのだと思うが、Power shellとか Hadoopとかの固有名詞は本当に古びるのが早い(が、雰囲気語の要素もあるので作品としては問題ないのだろうな)。

# ビッグデータなら分散画像認識で絞りこんでから返すのが筋だろうと思ったが、時期的に地下のサーバにマップしてからリデュースするということなのかなぁとか。

仕様がくそなのは、問い合わせ-全カラム分のデータ-マッチングとなっているところで、そもそも帯域の無駄遣いが半端ではない。しかも全カラム分のデータを取得するところは情報収集のための仕様ではなく単なるバグだから、修正はえらく簡単なはずだ。

サブシステムのデザインとして、問い合わせ-全結果の取得-マッチングとやるにしても(問い合わせ先でマッチングできない前提として)、全結果は不要なわけで、必要なのは*id,kanji_surname,kanji_givennameに書き換えるだけのことだ。で、問い合わせ元もマッチングのためには後ろの2つのカラムしか見ていないはずだからどうということはない。

正しくはワイルドカードではなくJIS可能なコードへ変換したコードを持たせておくことだろう。でもそれはデータとしてあらかじめ用意されていないかも知れない(が、しょせん90万文字を数万にマップした補助的なテーブルを用意すれば済むだろう)。

とか考えながら、どうもぱっとしないなぁと考えながら読んでいたら、第2の矢も用意されていてこちらはなかなかおもしろい。(各国の技術力の差として用意した設定なのだろうか)


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