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日々の破片

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2015-10-11

_ ブルガリアのイーゴリ公

東京文化会館でブルガリア国立歌劇場のイーゴリ公

15時開演のところ14:40くらいに席についたら、舞台で何やらトークショーをしている。

総裁にして演出家のカルターロフが喋ると通訳がたどたどしく日本語にし、それを解説者なのかなが、エスパー的に日本語に言い直すという不思議な方法で演出意図を説明している。

イーゴリ公はメトライブビューイングと、Amazon MP3のゲルギエフで知っているが、いずれも、最後はイーゴリ公の帰還で終わっている。

が、オペラは現代のものにするためには改変は厭わないとカルターロフは語る。復讐を誓って終わるのではだめだろう。そうではなく、婚礼の場での愛の勝利と和解で終わることこそ現代にふさわしい。したがって、1幕(ただし普通は2幕)のダッタン人の踊りのシーンを終幕に持ってきて汗と公の和解により終わらせるようにしたのだ、というようなことを語っていた。いずれにしろ未完の大作、素材をどう料理しようがこちらは観るだけのことだ。席はほぼ埋まっている。

プロローグは寺院の中でも広場でもなく、畑の中のジグザグ道を公と将軍たちが行進し、畑の中の農夫たちが讃える形式で歌われる。日食になるとイエスが天空を覆う。

ウラジミールの声が小さい。場所が4階右袖のせいか、オーケストラの音が良く鳴る代わりに歌唱が届かないときがあるが、それにしてもウラジミールの声が聴こえないのには驚いた。

演奏は相当テンポを動かしていて、モチーフが変わる都度の変化が大きい。メリハリが効いていて好きだ(多分パリカロフという指揮者)。

1幕はガリツキー公の館。ジグザグの道はそのままに、畑だったところに酒樽と子分を配した舞台。ガリツキーは朗々と良く歌うし動きも含めて芸達者な印象(アレクサンダルノスィコフ)。が、曲が一本調子になりやすくここはそれほどおもしろくない。さらわれる女性がきれいなのが妙に印象的(脚の出し方のせいかな)。ガリツキーが支配するとマントヴァ公国みたいになるのだろうけど、もっと野卑で、ロシアっぽいのだろう。

場面転換(カーテンの移動音が大きくて驚いた。何かの効果音かと思った)。

ヤロスラーブナ(皇后)の歌が始まると、息をのんだ。固くて芯があり実に美しい。見事な皇后の歌だ(ガブリエラ・ゲオルギエヴァ)。素晴らしい。

貴族の集結。さあガリツキーが軍団を率いて乗り込んでくるぞと思ったら、いきなり鞭を振りながらポロヴェツ人が攻め込んできて幕。

2幕目、汗の陣営。ジグザグ道は水平に変わり合唱の女性たちが並ぶ。左奥と手前に小高いところがある。最初その奥のほうで女性が歌い、あとからおそらくコンチャコヴナが出てきて手前の台で歌う。

ウラジミール登場。曲の良さももちろんあるが、プロローグの時とは異なり随分な美声で良い感じ。コンチャコヴナとの重唱も悪くない。イーゴリ公の足音を聞きつけ逃げるところが妙に長くあっち行ったりこっち往ったりする。

イーゴリ公の歌も良い(スタニスラフ・トリフォノフ)(もちろん曲が良いという面もある)。ウラジミールが最後まで通路で歌っているのに対して、左手前の台の上で歌う。おそらく舞台上の高低によって矜持を示しているかのようだ。

オヴルールとの掛け合いが始まる。この曲はオヴルールの歌だったのかと思い出すのだが、掛け合いの調子の変化の付け方がうまい。あくまでも落ち着いたオヴルールと大げさなくらいに悲嘆に暮れているイーゴリ公の対比。最後説得されたイーゴリ公がスパシーボと言うところで初めて、ロシア語だったなと思い出す。この時、イーゴリ公は床に降りている(逆にオヴルールが一段高い位置にいたような)。

元からある台よりさらに高い台に4人の美女を侍らせてコンチャクが登場。歌も振舞も威風堂々で素晴らしい。これも実に良い声(アンゲルフリストフ)。が、オーケストラに負ける場所が多い(ここまでくると明らかに席のせいだなと気付く)。

汗は途中で台から降りてきて公と同じ高さになる。明らかに高低差は演出意図となっている。

二頭の豹としてロシアを支配しようの歌詞に引っかかる。なぜ獅子ではないのだろう? (そうか、彼らはアフリカを知らない)。なぜ虎ではないのだろうか? (そうか、ウクライナにもトルコにも(ボロヴィッツとダッタンの混乱があるので)モンゴルにも虎はいない。でも、豹はいるのかな? なんか樹の上に居そうでトルコやウクライナに居るとは思えないのだが(で、後で調べるとカスピ海の南半分まで棲息していることがわかった。したがって彼らの会話で恐るべき猛獣の象徴として豹が出てくることはまったく理に適っているのを知った)。

終幕。やはりヤロスラーヴナの歌は素晴らしい。

公の帰還は、二人の楽人が告げるのではなく、ヤロスラーヴナ本人が遠くから来るボロヴィッツ人(オヴルール)とロシア人(イーゴリ公)の姿を認めることによる。あれは武人だは、まさか……公だわ。

イーゴリ公は復讐を誓い、オヴルールは退場する。

で幕となり、汗の陣営。

コルチャコヴナを振り切ってウラジミールが逃亡する。この二人、キャストに大きく名前は出ていないが良い歌手だなぁ(が、やはりウラジミールの声量には難がある)。コルチャコヴナはドラを鳴らして衛兵を呼び、ウラジミールの確保を命じる。連行されてくるウラジミール。

汗登場。お前を婿に迎えよう。

美女を侍らせていた高台の上に汗。そこにイーゴリ公とヤロスラーヴナが婚礼に参加するといってのこのこやって来る。さすがにこれはひどい演出だなぁと思う間もなく、ダンス大会となるのであまり気にならない。

中央アジアの草原からやキスメットでも使われている鳥の美しい歌と、黒パンダ団オーみたいな汗を称える歌とバレエ陣による舞踏の嵐。男の中に一人ひときわ威容を発するのがいて、カーテンコールでもえらく目立っていたからおそらくプーチンパオもこの人なんだろうなとか考える。

舞台構成としては見事な改変で感心する。最後に踊りを持ってくることで実にきれいに終わる。が、最初に本人が解説する必要があったのもわかる(この演出での物語的な辻褄合わせの無茶苦茶さ(イーゴリ公のキリスト者としての矜持の全否定となるわけだから)はイルトロバトーレよりもひどい)。

実に堪能しまくった。

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(明治のおかげで、これだけの舞台を比較的安い価格で観られるのだからありがたいことだ)


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