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日々の破片

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2015-12-28

_ スカーレットウィザードを読む

本読みの同僚と話していたら、海賊の小説の話になり、おれが知っているのはハーロックとかネコのやつとか言ったら、では茅田砂胡(よくまぁこんな名前を名乗るなぁと思ったが)のスカーレットウィザードを読めということになり、翌日、スカーレットウィザードの1巻を貸してくれた。

で、読んだら、滅法おもしろい。何十年ぶりかで読むスペースオペラじゃん(量子怪盗もそうかな?)。なかなか新鮮だし、続きを読みたくなるタイプつまり優れた娯楽作品だ。

多分おもしろさのうち幾つかは展開のスピード感(最初は追っかけっこだ)にありそうだが、それと同時に「お約束」としか言いようがないギャグパターンが繰り返し出てきてそれがそう悪くない点にもありそうだ。

主人公は、スカーレットウィザードの異名を取る真っ赤な髪で身長190cmの女性(しかも大財閥の跡取りで、宇宙一の大金持ちなので(海賊からは)女王と呼ばれていて、しかも超一流の軍人であり宇宙一の戦闘機乗り)と、追っかけっこに負けて結婚することになった身長196cm(細かな数字は忘れたので違うかも)の一匹狼(ということは腕っぷしも度胸も戦術も操船技術も最高ということだ)の海賊の二人で、最初から何をやっても負けるはずがあり得ない超人コンビだ。ここまで駒が揃っていれば、勝って当然過ぎて物語次第ではおもしろくなるはずがない。

が、財閥の重役たち(のうちの謎のグループが)が本気で財閥の乗っ取りのためにあらゆる政治力と経済力と知力(当然重役をはっているのだから愚かではない、ことになっているのだが、最後のほうになるといささか怪しくなってくるのは都合上しょうがないのかも)を振り絞って殺しにかかってくる(しかも、そのためのゲームの条件がいろいろ設定されていて、その制約も物語構成に一役かっている)から、十分にゲームになる。

あと、都合上からんでくる連中がそれぞれ一癖二癖あって適度に無駄口と軽口を叩くので、当たりはずれがあっても、十分に楽しめる点もでかそうだ。

女王も海賊も価値観(まるでラオール・ウォルシュだが、生き延びることが肝要だ)が比較的一貫しているし、かたや何かあっても金と政治で解決できるし、かたや殺して逃げれば済むので、一致して、他のクルーや社員や仲間と会話パターンが出来ている。そこがギャグになっているらしい。

クルー「~という問題が発生しました」

海賊「何をあわてているんだ? ~すりゃいいじゃん」

クルー「そ、そんな!?」

女王「何がまずいんだ? でもわたしなら~する」

地の文(うさんごろうはそんな調子さ/さすがの海賊も肩をすくめて女王にはかなわないと示した)

ただ、普通に読めば、海賊や女王の意見があまりにも当然な帰結を言っているので、それだけならば大しておもしろいわけではない(ある意味、他のクルーたちを愚か者に描いているような雰囲気すらあるので気分は良くない。が、海賊や女王は超人なので行動基準が全然違うのだからしょうがないということはわかるようになっているので他のクルー目線であれば驚愕の結論なのもしょうがない)が、そういうパターンだと納得して読めば、次々と出てくるのでそう悪いものでもなかった。リズミカルな文章だということだな。

これでは、女王と海賊の二人ですべての物事を決めるしかないので物語が破綻しそうなものだが、海賊船に搭載されている人工頭脳の設定を神レベルにしているので、それを使ってうまく処理している。この人工頭脳が持つユーモアのセンスが実に良い。

さらに、会話に入ると口をあんぐり開けるくらいしか役に立たないクルーや社員(やついでに軍人たちや他の海賊たち)だが、何人かは人格をきちんと与えられているので物語をきちんと回す(魅力的なわけだ)。さすがに、きちんと人格を与えられていないがそれなりに絡みがあるクルーたちがまとめて整理されて悲惨さを演出したのには驚いた。

・対象読者が最初うまくつかめなかったが、どうも、これは女性向けなのだな、と、途中で気づいた。作者が後書きでハーレクインロマンスを書こうとしたと書いていて、なるほどと納得したが、プロトコルが確かにロマンスのパターンになっている(セルフパロディのような映画を観て感想を言い会うシーンが途中で挟まるので、作者が緻密に計算しているらしいのもわかる)。

・というか、良く似た風貌(銀髪の長髪で長身)のコンピュータ潜り屋と海賊の親分が出てくるので、そういう登場人物を常に出したほうが都合が良いと作者が判断しているということは、ターゲット読者は、そのタイプが好みだと考えざるを得ないし、紋切型小説だという点を考慮すれば、ある種の女性読者が対象だと判断するのが妥当だ。

・一方で、スペースオペラの一言で済むことをバイオレンスがどうしたと書いているが、まったくもってバイオレンスが無い。にも関わらず、これをバイオレンスと表現するということは、バイオレンスというものに対する認識が無いことが(作者と読者の間で)前提となっている。

・宇宙間飛行のためにゲートという仕組みを導入して、それを操船技術の目安に利用しているのは、なかなかうまい方法だと思った。

というわけで、あっという間に1巻を読み終わったので、頼んで残り4冊(外伝も1冊あった)も貸してもらって、こちらも一気に読んでしまった。

全巻通して、完全な疑問点が1つだけ残った。

海賊船(の人工頭脳)と海賊の出会いがほのめかされている箇所があって、そこでは海賊が宇宙服だけで遭難だか脱出だかして浮遊している状態で出会ったらしいことが示されている。すさまじい偶然の邂逅だが、そのご都合主義は問題ではなく、その時点の海賊の年齢と経験が問題だ。おそらく10歳か11歳でなければ辻褄が合わない。しかも、宇宙船の操船経験は無いはずだ。海賊船(の人工頭脳)の設定から、乗船させるのは超一流の操船技術の持ち主でなければならない。したがって、この時点の海賊を捕捉する理由はまったくあり得ない。のだが、乗せたことになっていなければおかしい(実際、海賊が操作することになっているのだから)。子供だし度胸はありそうだし体格も良いから、教育しようと判断したという可能性が残るわけだが、さすがに(他の設定と比較しても)無理があり過ぎる(ので、邂逅について、作者はほのめかしで終えたのかも知れない)。

外伝は本編に比べるとちょっときつい。生き残った海賊が子どもの成長を陰ながら見守る物語だが、時が流れているのでお約束のクルーたちはほぼいないし、女王は途中退場(最初はちゃんといて、お約束としか表現しようがない銀髪長髪長身海賊親分とのエピソードが入る)するし、そういう理由でギャグパターンが出て来ないし、海賊船(人工頭脳)もほとんど出て来ない(地上の話だからだ)。たまに人工頭脳と相談しているところがあっても、そうそう無駄口ではなく物語上の必要が最初に立っているから深刻なものが多い。

多分、本編のカタを5巻のうちにつけるために掲載を見送ったエピソードをつなげたのかも知れない。

と言っても、新しい推進機関の開発物語(これはなんか良い話)とか、代わりを務める本物の神の一族との格闘や陰謀(会話)とかもあるので、別に退屈するわけでもなく、意外と新書一冊するっと読めた。

スカーレット・ウィザード 1 (C★NOVELSファンタジア)(茅田砂胡/きがわ 琳)

_ あれよ星屑の4巻も読んだ

あれよ星屑の4巻が出たので早速購入して読む。

最初は川島(部下を死なせたことの悔恨に苛まされていて鬱屈した日々を過ごしているほう)が出征するまでのエピソードで重苦しい。父親にしごかれている子供時代となり、出来が良さそうに見える兄貴がいやなやつかと思ったら、木の上で果物を寄越すところでそうではないとわかる(それにしても表現が実に良いなぁ)。

キネマ旬報を燃やすところで、一瞬誰が誰かわからなくなり、よくよく見れば生え際が兄貴が星で弟が直線と区別されていることに気付いてちょっととまどった(兄貴の無念を川島が覚えていて回想しているのかと思ったら、そうではなく兄貴に頼まれた言いつけを守り通せなかった川島の無念の回想だったのだった)。

で、その後もうっとおしいエピソード(川島に感情移入して読めばうっとおしくてたまらないという意味であって、読書体験がうっとおしいわけではない。身に迫る沈鬱感だ)が続き、どうなるのかなぁと思いながら読んでいると門松(くまのほう)が川島をストリップに連れ出して、あれよあれよと話が進み、なんかすごく良い感じ(最後の川島の表情が抜群に魅力的だ)で次巻に続くとなった。

・わりとリアリスティックな川島側の人物像とデフォルメされた門松側の人物像の対比がおもしろい

あれよ星屑 4巻<あれよ星屑> (ビームコミックス)(山田 参助)


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