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日々の破片

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2016-02-20

_ 好きな映画を絞るのは難しい

自分の好きな映画5本というのを考えると、実に難しいことがわかった。

1位は簡単で、観た回数も、好きかげんもまったく無問題でロシュフォールの恋人たちだ。

冒頭、ロシュフォール(という軍港)に向けて旅の一座が向かってきて妙ちきりんな橋に乗る。海のほうから町の広場を映し、そこでは群舞が繰り広げられているのを後目にカメラがどんどん通りに面したアパルトメントの1つに向かって行くと2階のバレエのレッスン場に入り込み、レッスン風景になる。さあ、おしまい。みんな帰って、とカトリーヌドヌーブが手を叩き少女たちが帰っていくと、ピアノを弾いていたフランソワーズ・ドルレアックがこちらを振り向き、いきなり双子座の女の歌が始まる。脚でハートを作る。ここまで一気呵成で涙が出るほど美しく、楽しく、心が躍る。これが映画だ。

そのあとも、ブブ(異母弟)を学校に迎えにカトリーヌドヌーブ(だと思う)が街を進むと、驚くほどの長回しに次々と水兵や街の人たちが出たり引っ込んだり踊ったり、楽しい楽しい、そしてジーン・ケリーが出てくる。ジーン・ケリーが子どもたちにチャップリンのモノマネをしてみせる。すべての人たちが関係を持つのだが、なかなか直接には会えない。ピアノ屋の主人のダムは、双子の母親の恋人で、お互いに会いたいのに近くに住んでいることに気付かず夢のような存在と考えているのに、双子はしょっちゅう両方と顔を合わす。フランソワーズドルレアックはジーン・ケリーに会いたいのにジーン・ケリーに会うのはいつだってカトリーヌドヌーブだ。水兵のマキシミリアンの運命の女性はカトリーヌ・ドヌーブなのだが、いつも画廊ですれ違う。そしてカトリーヌ・ドヌーブはマキシミリアンに会いたいのだが、会うのはいつも画廊の主人だ。

そこにジョージチャキリスをはじめとした旅芸人が双子の母親のカフェで見事な踊りを披露する。

音楽(歌)とダンスと脚本と抜群のカメラワークがすみからすみまで映画で、観ていてこれほどうれしくなるものは他にはない(トップハットですら弛緩するところがあるのに)。

ロシュフォールの恋人たち [Blu-ray]

(なんかえらく豪華な特典つきまくり版が出ていて買うかどうか迷いまくっている)

観た回数からいけば間違いなく次点はディーバで、この映画の色調、カメラワーク(カメラが切り替わるとそこに意外な人が必ずいる。特に2人の殺し屋の登場シーンは圧倒的に秀逸だ)、音楽、すべてが素晴らしい。カラスのワリーの引用も良いし、ジュール(主人公の郵便配達夫)のステュディオの廃工場を利用したらしいエレベータやオーディオセットも抜群、もう一人の主人公の謎の探偵ゴルディック(みたいな名前、忘れた)とベトナム少女の暮らす(広すぎてベトナム少女はローラースケートで移動する)倉庫とベトナム少女の記憶に出てくる灯台、あらゆる点で視覚的な刺激に溢れかえっている。

雨の中のディーバとジュールの奇妙なデートシーンも美しい。音楽はサティをモダナイズしたようなピアノ曲が流れる(似たような曲を次作のベティブルー(これは大嫌いなので、ディーバの評価も相対的に下がったわけだが、思い返せばやはりディーバは偉大だ)の主人公がピアノで弾くので監督とコンビの作曲家の作品だと思う)。

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そしてどれがどれだかわからなくなるほど見続けた田宮二郎の犬シリーズだが(学生の頃、東京テレビの昼の映画で全シリーズを流したのをビデオで録って何度も観た)、一番好きなのは森一生(後に確かに大した監督だと知ることになる)の暴れ犬で、波止場で田宮二郎が「ハジキ持つ手に心も踊る、黒いしゃっぽも、革ジャンパーも、いかすオイラのトレードマーク、夢を持とうぜ、暴れ犬」という歌は今でも歌える(というか歌詞も書けた)。

予告編

森一生 映画旅(森 一生/山根 貞男/山田 宏一)

(暴れ犬を観まくっていたときは、大魔神シリーズで唯一エンターテインメント性がすばらしい3作目の監督と同じ人なのか。うまいなぁと(2作目の三隅研二が何か勘違いしているようなこともあって)思っていたが、評伝を書かれる対象になるくらいの作家だとは知らなかった。でも考えてみると悪名も大菩薩峠の完結編(突然三隅研二の硬派調から娯楽調になって驚いたら監督が違ったので印象的)もえらく娯楽作品化していて、とにかく楽しませる映画作りでは圧倒的)。

次はパーマネントバケーションで、レーザーディスクで買って、これまたすさまじく観た。

主人公のクリスパーカー(妙にぼしょぼしょした声で延々と独り言を語り続ける)が日光が差し込む部屋(片隅の椅子に彼女が腰かけている)で、だらだら踊るシーンの美しさや、意味なくそのへんをうろうろうろうろしているだけの映画なのだが、これほど無軌道な美しさを感じる映画はない。唐突に話しかけられて、虹のかなたにのドップラー効果ジョークを延々と聞かされるシーンの楽しさとか、映画の語法とは何か? をひっかきまわす感もとても好きだ。

パーマネント・バケーション [DVD]

というように観た回数順に並べていくと、ロシュフォールの恋人以外にもベストに入れるべきものはたくさん出てくるのだが、するとゴダール(割と全部)やデプレシャン(全部)やビクトルエリセ(全部。エル・スールも何度も観たな、そういえば。ラベルの弦楽四重奏曲)やチェンカイコー(一部)やホウシャオシェン(比較的全部)やエドワードヤン(全部。でも処女作は持っているだけで観てない)や三隅研二(特に大菩薩峠)やオリヴェイラやキアロスタミやイーストウッドやカウリスマキやポンヌフの恋人たち(ジャームッシュとごっちゃになってしまって名前がポンと出てこないが、汚れた血やメルヴィルのやつも1人多役のやつも好きだな)やときめきに死す(森田の先が思い出せない)が入りきらない。というか、MGMのミュージカルが出番なしになる。ジブリもあるでよ。RKOのミュージカルも入らないじゃん(でもトップハットは何度も観ている)。ほら、アルトマンやカサヴェテスやニコラスレイやサミュエルフラーも観まくっているのに忘れている。ピータージャクソンだっているし。

順位をつけるのは難しいものだ。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
_ angora_onion (2016-02-20 15:55)

ディーバのゴロディッシュ、イイ味の役者さんですね。<br>サブウェイの役も好きでした。

_ arton (2016-02-20 18:25)

あーそうです、ゴロディッシュでした!


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