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日々の破片

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2016-03-21

_ ファスビンダーの糸の世界

すばらしい。1973年の作品。テレビ向けらしい。

ファスビンダー一族のイングリット・カーフェンが新聞社の女性記者、ペーテルカーンが精神病院の介護士(明らかに目つきと口元がおかしい)、なぜかエディー・コンスタンティーヌが車に乗った謎の紳士でゲスト出演。

アルファヴィル [DVD]

アルファビルのように、現代をそのまま利用したSFなので、おそらくちょっとした引用なのだろう。

協力はIBMで、1973年より少しばかり未来の話。

政府のスーパーコンピュータ研究所で、シミュラクラの研究をしている。所長が政府の次官を迎えて歓談していると主任のフォルマー教授が呼ばれてやってくる。彼は鏡を次官に突き付けて何が見えるか詰問する。おかしい。保安課長が彼を連れ出す。教授は突如席を立ち、どんどん廊下を進む。保安課長がそれに気づき追っかける。教授は突如死ぬ。

トリスタンとイゾルデ。

所長が主催したパーティにいい顔しているが明らかに小男がやってくる。シュティラ博士だ。所長に教授の後任を任せられる。ご褒美にコルヴェットを買える給料をもらう(その後コルヴェットを走らせまくることになる)。シュティラが保安課長から教授の様子について聞いていると、ディヴァインのようにに派手なメイクをした女性が話しかける。振り返ると保安課長が消失している。パーティの参加者はみな人形のように固まっている。

かくして、教授の死、保安課長の消失の謎をシュティラ博士は追うことになる。フォルマー教授の娘のエヴァ(1973年のゴスロリメイク。まるで死人)や、心理学者のハリー博士がからむ。

フーガの技法。

石を乗せたクレーンがずっとシュティラの頭上をつける。

シュティラたばこに火をつけようと立ち止まる。ライターがない。通りかかった女性に火を頼む。女性、私はタバコは吸わないといって断る。突如、飛び下がるシュティラ。カメラが振り返ると、石の下敷きになった女性の脚。シュティラ手を伸ばして女性が落としたライターを拾って火をつけて去る。まるで、オーソンウェルズだ。

所長は、鉄鋼産業の重鎮と共同戦線を張り、シミュラクラの私的利用を画策する。フォルマーはそれに反対していたようだ。

唐突にキャバレーシーンで子供の歌。(2部ではリリーマルレーンと軍歌。リリーマルレーンの歌手は銃殺される)

シミュラクラには9000人が現在を生きている。20年後の交通機関をシミュレートして鉄鋼産業協会の投資を成功させたい所長。

シミュラクラには1号のアインシュタインという人格がいる。彼はシミュラクラから抜け出して人間界の存在となりたい。

ついに、シュティラの部下と人格を入れ替えて脱走する。しかしシュティラに取り押さえられる。そのときアインシュタインが言う。第1歩だったのに。第2歩の前で捕まるとは。

シュティラが言う。第2歩とは?

アインシュタインが言う。お前の世界の下におれがいる。おれは1歩を踏み出してここに来た。そしてもう一歩踏み出してその上に行くのだ。つまり、ここもシミュラクラなのだ。フォルマーはそれを知って死んだのだ。

第1部おしまい。

シュティラは鉄鋼業界の意を受けた警察と所長からフォルマー殺人容疑で追われる身となる。それと同時に、自分という人格がシミュラクラの中のものだという不確定さと戦う。誰か、アインシュタインのように、このシミュラクラと上の現実世界の連絡係がいるはずだ。

連絡係を探すと、次々見つかる。が、その連絡は鉄鋼業界と研究所の連絡係ばかりで、ますます陰謀に巻き込まれる。

何が陰謀で何が現実か混乱する。

次々に事故のように殺しにかかってくる(上の世界らしい)。と同時に鉄鋼業界の意を受けた警察の包囲も迫ってくる。

エヴァが山荘にやってくる。追い返すと目に涙。山荘から見ていると車に乗らずにどこかへ消えようとする。そこで、エヴァが連絡係とわかる。

エヴァはシュティラを助けようとする。

山荘に入った二人を追ってカメラが外から回り込み窓の外から内のシュティラを映す。シュティラ、奥へ引っ込む。カメラ、再び動き出し角を曲がって別の窓から中を映す。話している二人。カメラそこではじめて室内に切り替わる。

なぜだ?

私は連絡係ではなく、上の世界の私の投影。あなたの姿形はわたしが愛した人と同じ。でもその人は今は誇大妄想狂の異常者で名前はシュティラ。

このシミュラクラに自己の姿の投影としてあなたを作った。そして今はあなたを苦しめている。あなたは明日8時に警官隊に射殺される。

最後、射殺寸前にエヴァがシュティラの入れ替えを行う。シュティラは上の世界の妙な素材感のブラインドやカーテンをさわりまくる。ブラインドが自動的に上に上がり陽の光が室内に入ってくる。二人抱き合って床に倒れる。元の世界の研究所の駐車場ではハチの巣になったシュテラが車の上で倒れている。めでたしめでたし。

全編、鏡。エヴァとのレストランのシーン(エヴァの家かな?)。

元秘書の家の鏡。

見ていて思い出したがファスビンダーは鏡の作家だった。

物語はフェッセンデンの宇宙+ディック(おれは何者だ)で、サスペンスの作りはちょっとディッシュ風。

所長がマスコミ会見にシュティラを呼んで、「頼むからふつうの人がわかる言葉できみのやっていることを説明してくれ」「わかったやってみよう」とか、一晩でハックしてシミュラクラに踊る所長を入れたりするのはおもしろい。

が、とにかく画が素晴らしい。ペーターカーンの登場シーンの不気味さ。リリーマルレーンのくだりの最初の軍歌の部分。キャバレーの席でのフロアマネージャの立ち居振る舞い。調理場に入るといきなり裸エプロンの逞しいコック。意外と死人みたいで気持ち悪いがエヴァのメイクが気に入った。プールの周りをぐるっと回って、ゆっくり着替えて精神病院の看護師から逃げるあたり。コルヴェットが地下駐車場で右の上り口に入るところ。エヴァを射殺しようとすると黒い犬に変わって襲ってくる(まさかサミュエルフラーじゃないだろうが)。ホテルの玄関から出てきた二人組と入れ替わりに右手の窓の下から玄関に移動して入り、そのままロビーで踊る人たちを突っ切って進むシーン。

Douglas Sirk 7 Collection [Import anglais]

(間奏曲がない)


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