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日々の破片

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2016-07-18

_ 原爆先生がやってきた! を読んだ

数年前からFBで羽生さん(はじめよう! 要件定義の著者)が読み聞かせに出かけるみたいなことをちょくちょく書いていて、何をしているんだろう? と思ったら、小学生のための特別授業というのをしているのだった。

その特別授業の「7000℃の少年」について書いた本を頂いたわけで読んだのだった。

どえらくおもしろい。しかも読後に感じるところもある。なかなかの読書体験だった。

まず、授業そのものの見聞録みたいなものがある(全体の1/3)。とにかくこの授業そのものがおもしろいのだが(先生の池田眞徳さんの父親が少年兵だったときに体験した原爆投下直後の遺体処理と救命処理の覚書を池田さん自身が小説化したものを語るという内容だが、語り口と羽生さんによる再現がとにかくうまいのだ)、しかもそこに見聞している羽生さんの視点が入ることで具体的にどのような授業となっているのかが解説されて、それにより周りの反応などがわかり(しかも、それがとても納得感があり)それがまたおもしろい。

(子供の頃に読んだ『はだしのゲン』で被災した人たちがミイラ男みたいに手を前に突き出して歩いているシーンは覚えているのだが、なぜ手を前に突き出しているかの理由は今回初めて知った)

そもそもの最初のプロローグとまえがきで、どうも原爆を題材とした特別授業が行われていて、それがめっぽうおもしろいと評判でリピーター学校があり、さらに小学生の感想文がサイトに掲載されているのだが、それがしかつめらしい高邁な書かされた感想というよりも本気でおもしろがっていることがわかる、一体なんだこれは? 不思議だから見学して調べてやろうというモティベーションが導入で語られる(もちろん、それは読者体験のための著者体験となる)。

原爆体験をメタ化した授業をメタ化したものをうえからメタ化してさらに読者であるおれがメタ化する。つまらないわけがない。メタ竹の子で、どこまでも皮があるからこそ深さがある、それがおもしろいのだ。(追記:ここまで抽象化した分析があることで、単に原爆先生の小学生への特別授業についての本からはみ出して、あるものを他者へどう訴求するかという内容にまで達している。または、羽生さんの分野である要件の分析−定義−設計−実装の適用事例としても読める。したがって読んでいる間中、すさまじく脳みそが刺激されるのだ。おもしろいに決まっている)

次の1/3は、どうしてこの授業がはじまることになったか、なぜこのスタイルとなったのか、そしてなぜこの授業はおもしろいのか?(本書の読者であるこちらというメタな存在に対してだけではなく、授業を聞いている子供にとってという重要な内容である)について、羽生さんと池田さんの対話篇となる。

・さて、原爆先生とはまったく関係ないことだが、子供がまだ子供とすら言えないころ、家にある絵本とか童話とかを読んでやるわけだが、妻がどこからか、読み聞かせるときは声色使ったり泣き真似したりとか余分なことはせずに、たんたんぼうでいくのが良いらしいと、仕入れてきて教えてくれたのだが、案外、池田さんの方法論と通ずるものがないわけでもなさそうだ。日常の延長の中で語られる非日常ということかな。

そして残り1/3、池田さんと羽生さんの広島の旅となり、終わる。

まず、ストレートに広島で何が起きたのかの本である。

次に、広島を体験した親と子の関わりあいの本である。

次に、子供に何かを教えるということはどういうことかという本である(教えることはできないが強い正のきっかけを与えることはできるという結論になるのはある意味当然なので、それをこの場合はどういう手法をとっているかということだ)

次に、子供に話しを聞かせるにはどうすれば良いかの試行錯誤の本でもある。つまり、おもしろさというのは、つまり興味を持ち、先を知りたいと願うようになるということを、どうやって生じさせることができるかという実験の本でもある。

つまり本書自体が、特別授業をメタ化したものとなっている。明確に語られる主義主張はまったくなく、なぜこの授業をすることになったのかの経緯とそのための工夫が語られている。おもしろい。

原爆先生がやってきた! 原爆先生の特別授業「7000℃の少年」より(特定非営利活動法人 原爆先生/池田 眞徳/羽生 章洋)


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