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日々の破片

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2016-11-26

_ 新国立劇場のラボエーム

おそろしく不思議な舞台だった。

指揮のパオロアリヴァベーニは、素晴らしく歌わせて、メリもあればハリもある(東京フィルハーモニーがそれにばっちりついて来る)のだが、異様にテンポが遅く感じる。

1幕では、指揮者のテンポが遅すぎて歌が破綻しているのではないかと思ったが、全編通すと、指揮はこれで良く、歌手がついてこれていないだけなのではないかという気になった。

とはいえ、2幕のムゼッタのワルツが実に素晴らしい。石橋栄実。上物を脱いで歌い出すとゴミゴミしたモンパルナスがムゼッタの独演場に早変わりだ。呆然とした。今まで観たボエームの舞台の中で最も輝かしい。

ミミはアウレリアフローリアンという人で、美しい声だし声調も好きなのだが、今一歩調和がないように思えた。太陽は私ひとりのもののところとか、なんだろう? 声も歌も良いのに、響きが不足している感じがする。

ロドルフォのジャンルーカテッラノーヴァという人は演技も歌も良いのだが、残念ながらおれの好みではまったくない声で、相当残念な感じだ。しかし演技はすばらしく、演出の粟國淳のうまさもあるのだろうが、4幕のミミ、ロドルフォ、ムゼッタのマフの贈り主を巡るやり取りで、こんな手垢のつきまくった作品で思わず貰い泣きしそうになってしまった(ロドルフォが自身の情けなさに崩れ落ちるところ)。

コッリーネは実に立派、パルピニョールが見事に通る声でこれまた立派(子供に、ロメオの人だと教えられる)。

舞台美術の良さは、3幕の番小屋がいつの間にかマルチェッロが働く居酒屋に変わるところと、最後の屋根が傾いて雪景色(出会いの冬に変わるわけだが、実際には5月)になるところに顕著な気がする。1幕、ベノアが左から来るときに、右に良くわからない帽子の男が来ているのが謎演出。ベノアの登場を衝撃的にさせるための仕掛けなのだろうか。

モミュスで右に陣取ったショナールとコッリーネが他の2人の客と一緒にいるのは良くわからない。なんぱした女性2人ならわからなくもないのだが、1人は帽子の紳士に見える。

舞台の上(歌手)と下(指揮)がどうにもずれているように終始感じたが、しかし、良い舞台だった(観られて良かった)。

前回観た時も演出に感心しているが、同じところで引っかかっているのがおもしろい。歌手は今回のほうがムゼッタ含めて良かったと思う。あと、コッリーネに対するショナールの呼びかけが印象的なのも同じだ。

帰り、車の中でクライバー版で聞き直してみる(指揮者のテンポが異様に遅く感じたからだ)。と、それほど違うわけではない。すると、歌手側とのインターフェイスの問題なのかなと思ったわけなのだった。

La Boheme(Puccini)

(音は最悪だし、パヴァロッティの声は嫌い(とは言えロドルフォとしてはテッラノーヴァよりも好き)だが、それにしても圧倒的に素晴らしい。そういえば、今日の観客はスカラの観客と同じく適切な拍手だったな)


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