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日々の破片

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2019-02-02

_ 新国立劇場のタンホイザー

新国立劇場でタンホイザー。どえらくおもしろかった。

この演出は少なくとも1回は観ているはずなのだが、冒頭の樹がにょきにょき生えてくる情景くらいしか覚えてなくて前回はどうだったかな? と見返すとウァズニャックの漫談とか全然関係ないこと書いているが、やはりおもしろかったようだ。それにしても覚えてないな。

フィッシュの指揮はのると遅くなるタイプなのか予定時間がどんどん伸びたが、聴いている限りとても良い。東京交響楽団も立派だ(ドイツだけど読売ではないんだな)。

ケールはちょっと鼻にかかる感じのテノールでそれほど良いとは思わなかったが、リエネ・キンチャのエリザベートと、アレクサンドラ・ペーターザマーのヴェヌスは素晴らしいのではなかろうか。ヘルマンが朗々たる歌声であれ? 妻屋じゃないのかと思ったら妻屋で指揮のバランスが抜群なのか、位置(3階中央4列目)が音響的にはとても良いのか、とにかく感心しまくる。この人がだめだと2幕3幕が話にならないヴォルフラムはローマン・トレーケルという人でこれまた良い。

指揮、演出、歌手=役者(結構、棒立ち説明みたいなのが多い曲なので歌手としてはもちろん役者の能力が求められる作品だと思う。CDで聴いていると耐え難く退屈なわけだ)が良くて、合唱が飛び切り良い(巡礼もよいが、最後の女声による天使昇天の美しさがとんでもなく素晴らしかった)ので、楽しめないわけがない。

13世紀の話なので、例によってエリザベートとタンホイザーが13~14歳、ヘルマンが29歳、ヴォルフラムはちょっと年長で17歳、ヴァルターとかも14歳と考えるとしっくり来る。

結局タンホイザーは傲慢なのではなく子供そのものなのだ。

それに比べてヴォルフラムは弟分のようなタンホイザーというかハインリヒが可愛くてしょうがない。自分ができなかった14歳時代を謳歌しているからだ(ここで嫉妬しないで可愛くてしょうがないところが、ヴォルフラムの最大の美点だ)。

それで、泉を眺めるだけで良しとしようと歌うのに、ハインリヒはその心をまったく無視して(というか子供だからまったくわからないわけだ)馬鹿じゃねぇか、泉は飲むためにあるんだぜと歌うし、エリザベートはさっさと飲んでくれと演技する(らしいがそれは観ていなかった。いずれにしても3幕ではちょっとわたしもいけないことを考えたけど神様許してとか歌うので、というかヘルマンがものわかりが良くて本来なら良かったのが、タンホイザーが羽目を外し過ぎたのが悲劇の元)。普通だったらヴォルフラムはむかつくと思うのだが、この男はそれを大して気にもしないのだから実に立派な大人だな。

それ以外のヴァルターだのビーテロルフだのは才能がない子供に過ぎないのではなから相手にもならない(このあたりのタンホイザーの批評の歌の作り方はワーグナーの文才が走りまくっていて実におもしろい)。

それにしてもパルジファルのグルネマンツとかタンホイザーのヴォルフラムといった重要な第三者視点のナレーターを入れる作劇法はおもしろい。ちょっとニコラスレイみたいだ。


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