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日々の破片

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2019-06-09

_ プッチーニと新海誠

音楽で一番好きなのはプッチーニだが、もちろん演奏家と体調といったものにも左右される。ただ、たとえば蝶々夫人の花嫁行列が立ち現れるところや、トゥランドットでリューが氷の女王の次に歌うバイオリンソロに重ねて歌い始める箇所など、そこのメロディとオーケストレーション、特にオーケストレーションなので音色ということになるのだが、に凄まじい快感があって、それはワーグナーだとジークフリートの最後ハープが上昇してブリュンヒルデが目覚めの挨拶を歌い出す瞬間とかでもそうなのだが(そしてワーグナーの場合は全作品を通して、そこしかない。あとはザンドナーイのフランチェスカの3幕途中の箇所とか北イタリア学派にはそれなりにあるので、おそらく和声進行と音色が特におれにとっては重要なのだろう)、快感としか表現しようがない。カタルシスではない。

で、それ以外の表現芸術ではこの種の快感というのはまったくないのだが(唯一の例外が、とても良くできた飛翔シーン、それも飛び立った瞬間の映画や舞台となるのだが、これまで舞台では野田秀樹で1回だけ、映画でも数えるほどしかない)、今日、新国立劇場で蝶々夫人を観ていて、あれ? 昨日、映画館で同種の快感を味わったぞ、と気づいた。

で、昨日観たのはアラジンだが、確かに飛翔シーンはあり、メンケンの音楽は最高だが、でもアニメほどの快感はなく、あれはなんだったか? と考えて、思い出したが、新海誠の天気の子の予告編なのだった。

新海誠は、まともに観たのは君の名はだけだし、正直まったく絵柄も話も何もかもが好きではないが(ついでだが、アニメの声優のセリフ回しが実に気持ちが悪く耳に不快でたまらんのだが、ジブリの場合は同じような感覚の人が作っているのか、とてもまともに観ていられる)、空に向けてカメラが向けられてそこから光が注ぎ落ちる映像は別格だ。あれはプッチーニと同じくらいの快感で、ということは、天気の子は映画館に観に行くのだろうなぁと思うのだった。


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