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日々の破片

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2019-07-14

_ マラーニ 通訳

書棚を整理していたら、ガリレオ書院という見慣れぬ封に入った本が出てきてはて? と思ったらマーケットプレイスで購入したらしきイタリア文学が中から出てきて、おれはいつなんでこれを買ったのだろうと訝りながら読み始めると、どうも舞台はスイスで主人公はフランス人(というのはおれの国家と国語と母言語の混乱で実際はスイス人)で、これのどこがマラーニ(という名前から判断できるイタリア文学なのだ?)だろうと考えながらも、あれよあれよという間にドイツ人同士の職場の諍いに巻き込まれていくと同時に、頁を捲る手が止まらなくなり読了。

FBかTwitterで誰かが賞賛していて買ったのかなぁ?

冒頭、主人公の独白で破滅した人間であることが語られる。一人称小説だ。

ジュネーブの国際機関の局長にまで出世した人物だが、母言語以外の言語習得に対してあまり良い思い出がない。それが通訳という母言語以外の多数の言語を習得した人間たちを管理する局長になり多忙な日々を送っている。

複数の言語を操作する人間には何か欠損があるという考えにとらわれている。

(随分と失礼な作品だと思ったら、読了後の巻末解説で、作者本人が多言語話者だということが述べられていて、自分が自分の眷族を別扱いするタイプだったのかなと思う)

ドイツ人の主任が、部下の奇行を告発する手紙を寄越す。実際得体が知れないこの部下は15ヵ国語を自在にこなす不思議な匂いを持つ男で、局長は和を以て貴しとなしたいのでなかなか馘首を宣告できない。

一方、私生活では家具と会話する同伴者との別離がある。

ついに免職のレターにサインをすると、さんざんつきまとわれた挙句、呪いの言葉を聞かされる。原初の言語、蛇がイブを誘惑した言語を、あと一歩で解明できたのに。

通訳は都市名のリストを残し失踪する。

呪いのせいで、局長は突発的に通訳と同じ謎の言語を語る発作に見舞われるようになり、ついに免職、ミュンヘンにある怪しげな精神科医のもとで言語治療を受けることになる。最初にルーマニア語の習得から始まる。

その後、殺人事件に巻き込まれ、自動車ギャングとしてルーマニアの田舎を荒らしまわることになり。ミュンヘンでは浮浪者となる。

さらにリトアニア、エストニアと旅は続く。

最後、すべての謎が解明される。

おもしろい!

通訳 (海外文学セレクション)(ディエゴ マラーニ/Diego Marani/橋本 勝雄)

(既に絶版なのでガリレオ書院なのだな)

ルーマニアのあたりは、ひょんなことから転落した男がギャングになるロードムービーで、気狂いピエロや暗くなるまでこの恋をを彷彿させるし、全体的にはまじめな官僚がちょっとした偶然で山賊になるフルスタリョフ、車を!を彷彿させるし、読みながら映画の記憶ががんがん甦る。特にルーマニアのシーンは好きだし、オデッサの海岸に打ち上げられた一角の群れのシーンも悪くない。

実に良い読書体験だった。

フルスタリョフ、車を! [DVD]

(フルスタリョフの主役の見てくれは精神病院で一緒になる大佐みたいだが、それにしても何か相通じるものがある。フルスタリョフでは逆転からの解放で掴んだ自由を満喫している笑顔で終わるところに通底する心持と同じものを、まったく笑顔はないが、主人公のルーマニアでのギャングっぷりに感じたのだろう)


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