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日々の破片

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2020-11-25

_ 有楽町でウルフウォーカー

FBで小山さんが妙に惹かれるポスターの映画を観ていたので、聞いてみたらトム・ムーアの3作目のアニメで云々と答えられたが、おれは知らない作家だった。ますます興味を持ったら、強くお勧め評価が返ってきた。

ただでさえ興味を惹かれた上に、あれだけ映画を観まくっている人のお勧めならば観たほうが良さそうなので観てきた。

おもしろかった。

舞台は中世のアイルランド。イングランドから派遣された護国卿が支配する町は膨張する人口を支えるため、森林の開墾事業に邁進している。

町の外には羊飼いがいる。森から狼が出て来て襲われた羊飼いだが、狼を統率する母娘に傷を癒される。狼を率いて治療を行う魔女だか女神だかをウルフウォーカーと呼ぶのであった。

という舞台設定の説明的映像の後に物語が始まる。

護国卿の部下の同じくイングランドから渡って来た狼猟師のグッドフェローの娘ロビン・グッドフェロー(という名前だとどうしても夏の夜の夢を想起するが、関連性は無いような)を主人公に物語が展開する。

ロビンは登場するやいなや、わがまま言いまくりのきかん棒で観ていてうんざりさせられる役回りだ。マーリンという魔法使いのような名前の隼と仲が良い。

とにかく父親と一緒に猟をしたくてたまらないのだが、当然のように止められる。のみならず、護国卿(仕事熱心なので、国を豊かにするための各種事業に忙しい上に、植民地支配の常道としてテロリズムの徹底弾圧のために地元民をすぐに投獄しまくる(死刑にはしないので物語が機能するとも言える))ので、いろいろ軋轢が大きく、父親も相当難しい立場にある。何しろ、森の狼は賢く、まったくグッドフェローの手に負えないからだ(狼たちにはウルフウォーカーがついているからだが)。

当然のように紆余曲折あり、羊飼いの手助けもあり、ロビンは森の中に入って行き、そこでウルフウォーカーの娘のメーヴと知り合う。しかしメーヴが狼の姿をしていたために、ひと悶着あって、ロビンもウルフウォーカーとなってしまう。

夜中に、魂が狼として独立した状態に最初おどおどしながら、森へ進み、メーヴに歓迎され、嗅覚(この映像表現がうまい)聴覚の使い方を教えられて、二人で自由に山を駆け巡る。

ここが抜群で、感動的だ。

ここで流れるのがAURORAの狼たちと駆けるという歌なのだが、帰ってから探したら、映画の製作年代より遥か前の歌で不思議になる。どうも、この歌をトム・ムーアが聴いて映像が浮かんできて作品化したのではないか? (このあたりの話はおそらく映画の解説に出ているのだろうが面倒なので読んでいない)

(最初予告編を観て、女の子二人、森林破壊(自然対人間)、AURORAときて、アナ雪2みたいな映画か? と思ったが、全然違った)

予告編では、すばらしい映像っぽかった、狼の背中にロビンが乗って飛び越えて行くシーンは、一連の流れの中ではあっという間で、予告編の切り取りのうまさに感心したが、逃走シーンでの、最初は閉まりかけた柵をくぐり抜けて、次はくぐり抜けずに上から回るといった変化のつけかたとか、映画として実にうまい。

(最初は、美しいおそらく水彩で描いた背景にセルの人物だけが動くアニメ表現に違和感があったが、使い分けがうまいのですぐに慣れた)

森に火がつき赤がメインの色彩となったときの赤い狼の疾走が印象的。

最後は難しいハッピーエンドとなる。

護国卿もウルフウォーカーになるのか? と思わせないでもないが、本気の英国人なのでそうはならず殉教する。

一方、ウルフウォーカーは果てしない撤退への旅路につく。18世紀にはアイルランドの狼は絶滅したそうだ。


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