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日々の破片

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2021-12-30

_ パリのランデブー

妻がプライムでロメール無料祭りをしているというので、未見(だと思う)の飛行士の妻を観ようとしたら、日本では観られない設定だったので、しょうがない、同じく未見のはずのパリのランデブーを観た。うーん初見だと思うが(そもそも日本でも公開したのか? と疑問もあるが、クレールの膝のようにアテネで観たのもあるから微妙だ)。

それにしてもおれはロメールの映画、本当に好きだなと再確認。

60年代に撮ったのか?と思うような紙切れに手で書いたようないい加減な題が出て(なのでクレールなどと同時代の作品だと思って観始めたがどう見ても6~70年代とは思えず最後に1990年代の作品として納得)、街角のバンドネオンと歌手が、パリでランデブー(カタカナとしては死語になったな。宇宙船もドッキングとか英語みたいなカタカナ使うようになったし)だよんだよんみたいなくだらない歌を歌うと本編が始まる。

最初のエピソードは二股かけてる恋人の二股現場に偶然二股の相手と連れ立って現れてしまって別れたあとに謎のスリまたはナンパ師が待ちぼうけを食らう。

また歌とバンドネオン。ハッピーになるか悲劇になるかはわからないけどランデブーは楽しいなみたいなくだらない歌。

妻が、それにしてもロメールの映画に出てくる人物はみんな島村みたいな服を着ているなとか言い出す。それがやつらのBCBGなんだろうと返す。

次のエピソードはおしゃべり女とランデブーして公園やら墓地やらを散歩しまくる話。最高。とにかく二人で喋りまくる。女の現在の同棲相手が旅行に行くということで、二人で旅行者のように東駅からパリへ戻る。男のほうはわざわざ日本語のガイドブックを持参してくる。しかし、目当てのホテルーー洗濯船の脇のマロニエに隠れたーーに着きそうになったところで女の現在の同棲相手が別の女とホテルに入るのを目撃する。女は私のアイディアをパクるとはと怒り心頭で男を追い返す。

バンドネオンと歌。

画家(ここまでは大学生だったのが急に大人になる)がなんかデルヴォーとアンソールを混ぜたような油絵を描いている。北欧の女が登場。スウェーデンの女友達がパリ案内しろと送り込んできたのだ。自分の絵の色使いが悪いとか言い出すので気分を害する。ピカソ美術館に行きたいというので案内して入り口でおっぽりだす。と、道にいる女が気になり尾行する。女もピカソ美術館に入り、母と子の前でカタログに模写か感想を書くだかを始める。パリの美術館は本物の美術館だな! 男、北欧女に捕まるのでいろいろ言いながら母と子の前に来る。男、延々と絵の説明を始める。女、男がうるさいので立ち去る。男、北欧女に適当を言って追いかける。私は20分後に夫とジュネーブへ帰るのよ。そこをなんとか、と男食い下がってアトリエに連れていく。絵画談義をする。女去る。男が続きを描いていると電話がかかってくる。夜遊びに来いよ。男しばし考えるが承諾する。男カフェで待つ(多分北欧女を)。が、来ない。男電話して行けなくなったと伝える。まあ良かったなと呟く。

おしまい。

特に2番目が最高。とにかく歩いてなぜ自分は今の男と一緒に暮らしていてお前とは寝ないのかみたいなことを延々と喋りまくるだけなのに抜群におもしろい。映画だからだ。

役者はおそらく全員ほぼ素人だろう。特にエピソード1ではあまりのシチュエーションのくだらなさに役者が地で笑ってしまっているショットが結構ある。まさに映画で楽しい。

パリのランデブー(クララ・ベラール)

妻が洗濯船を知らないというので、ピカソやアポリネールなんかが共同で住んでた、日本で言うとトキワ荘だな、もちろんピカソもアポリネールも漫画家ではないけど、と説明したら妙に受けて笑いだした。

日本で最初のアパアトは同潤会で大正だし、芸術家が共同生活なんて(白樺村とか目白村とかだって、基本戸建で別々に暮らしている、夏目漱石のところに書生として内田百間がいるみたいなのはあるけど、先生と書生の関係とは違うからやはり)トキワ荘の時代にならなきゃないだろうと言ったら、いやそんなことはないはずとか言い出してしばし考えていたがやはり思いつかないようだった。

と書いているうちに石川啄木と金田一京助は同じ下宿だったと思い出したが、洗濯船の人数ではないな。

_ 赤い河

ラストショーを観たせいで赤い河を観たくなったのでこれまたプライムで観る。

コマンチ族は問答無用で襲ってくるから問答無用で撃ち殺すわけだが、いやそれはお前の土地ではないし不法侵入者のくせに偉そうだなとか今の目で見てしまうわけだが、なぜかそれなりにバランスしているのでそうは気にはならない。たとえば、旅の重要な仲間に(おそらく白人融和政策をとっているから)ナバホ族がいたりする。

それでも赤い河を渡って、ジョン・ウェイン演ずるトムがここをおれの牧場にすると宣言すると向うから男が二人馬に乗ってやってくるシーケンスとかには頭を抱える。

「ここはディエゴの旦那の土地だ」

「いや、おれの土地だ。そもそもなんでディエゴとやらの土地と言えるんだ?」

「スペイン王からもらったからだ」

「知るか。河からこっちはおれの土地だ。帰ってディエゴにそう伝えろ」

「そういう口を利くやつはこれまでも見たことがある。全員、この土地の肥やしとなっているがな」

「試すか?」

(早打ち合戦)

と、完全にヤクザだなぁと不快になる。しかしおもしろい。ホークスの映画は話が早いのだ。それが観ていて快感となる。

女と別れるとすぐに煙が上がって燃やされたことがわかるとか、最初から調子が良い。

南北戦争ですっからかんになった南部では牛1頭が小麦粉100gより安くなってしまう。

14年かけて大牧場を作り上げたトムは牛10000頭を持っているが、破産と同じこととなる。一方、北部ではみんな肉を食べたいが牛はいない。ミズーリに行けば1頭20ドルで売れる。ならばミズーリへ行くまでだ。

いちいち牛を分離できないので近隣の牧場の牛も全部ひっくるめて出ようとすると、そこに隣の牧場主が用心棒を連れて文句を言いに来る。

そうはいってもお前もジリ貧じゃないか。おれがミズーリで売って来る。お前の牛の分は1頭あたり2ドルで支払う。無事に帰れたら、だけどな。

手打ちとなる。

マシュー(インディアンに幌馬車隊を襲われて孤児になった子供が成長するとモンゴメリークリフトになる)とチェリー(隣の貧乏農場の用心棒だが、トムの貫禄に惚れて転職)の早打ち合戦も楽しい。

「ミズーリへ行くぞ!」

「ハイヤー(顔、顔、顔)」

名シーンだなぁ。ここで牛の大群を示すために360度回転のような(途中継ぎ目が入っているようにも見えるが)撮影をするのだが、気持ちが良い。

女房が欲しがっていたから赤い靴を買ってやるんだと、死亡フラグは見事なまでに死亡フラグになっていたり。牛の暴走はおっかない(ライオンキングどころではない)。というか撮影中に数人は死んでいるんじゃないか?

それにしても100人のカウボーイが10000頭の牛を引き連れて(連環の計とかはなく単に歩いている)数1000マイルも旅をする(どうも史実をある程度下敷きにしているらしい)のはすごいものだ。カウボーイってすごい技術なのだな。それを言ったらCGとか無い時代だから、スタジオ内に少なくとも100頭くらいは連れ込んで撮影しているのだろうから、その訓育技術も凄いものだ。

撃ち合いによってトム(牧場主で、主役なので当然ジョンウェイン)を追放したマシューが無事カンザスの鉄道駅の町にたどり着き無事トム名義で小切手を切らせてからのトムとの対峙(その前に加勢しようとした、または腕試しをしようとしたチェリーは殺されてしまったのだろうか?)が当然のように殴り合いとなり、おそらく二人とも倒れて笑いながら手に手を取って引き上げて和解となるかと思ったら、ここで旅の娼婦が割り込んできて演説を始めるのには、お、そう来るかと思った。西部では女性も強いのだ、という良いシーン。

問答無用でインディアンを殺そうが、傑作は傑作なのだった。

赤い河(字幕版)(ジョン・ウェイン)


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