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明治座で1789。明治座は初めてで、帝国劇場の建て替えがなければおそらく一生縁がなかったと思う。完全に歌舞伎仕様なので左右席は舞台ではなく中央座席を向いているし、花道が作りやすいようにしているからだろうが座席はほとんど傾斜がない。が、列間は結構空いているし、背もたれは低いが別に舞台が見にくいわけでもなく、それほど悪い劇場ではなかった。ただ、2階がやたrと1階にせり出しているので音楽はくぐもってあまりよろしくは無さそうだ(ただし今回についてはミュージカルで、オーケストラは録音なので、全然気にならなかった)。
全体としては1幕の前半はいまひとつで、全てを賭けるマリーアントワネットはなんか弱いし、パレロワイヤルではダントンが登場時はおお1789ワールドのダントン(決してブ男ではないむさくるしいおっさん)だと説得力ある登場なのだが歌がいまいち弱いうえに一瞬とちる(が、曲全体としては後半のロランが参加した後はえらく良い)とかあったが、全体通すと実によい舞台だった。テニスコートでのロベスピエール伊藤あさひの踊りも歌も良い(曲は1789の中ではそれほど好きでもないのだが、この舞台では実に良いものだった)。逆に3人の革命家弁護士の中では1789の作劇上は最も重要な人物(ペアでロランと妹を仲間に引き入れる)のデムーランがいささか弱く感じた。
一方、岡宮来夢(すごい名前だ)のロナンは特にサビの高音部の絶唱が抜群で実に聞かせる。やはり主役が強いと全体が良いものになるものだ。
ロランを別とするとシャルロットが出色で、子役だし筋書きからもどうでもよさそうな役なのだが、レミゼラブルのガブローシュと同じで舞台全体のムードメーカーだから子供っぽい(というか子供だから当然なのだが)良く通る甲高い声(パレロワイヤルの歌には欠かせない)とはしゃぎ方が実に楽しくて、カーテンコールでダントンと並ぶところまで実に楽しませてくれた。
時々、なぜ決起した市民が監獄を襲うのか混乱するが、バスチーユが武器庫を兼ねていることをきちんと書いているので見るたびに納得させられる。
というか、監獄側と武器庫側で思想も背景も異なる管理者が全権を握っているというのはおもしろい。
・作劇上、パレロワイヤルでの決起集会に軍隊が乗り込んできて全員撃破するように見えるのはあまりうまくは見えない。イメージシーンに徹するのであれば、個々の軍人は市民なのだから反転する(実際、成功する革命はすべて軍隊の大半が体制側から回れ右することで成立している)ように作ればよいのにと思った。
実に良かった。
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