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日々の破片

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2013-10-13

_ 新国立劇場のリゴレット

先月観たスカラ座のリゴレットはとても良かったが、今月は新国立劇場。

演出はモダンらしいが、それ以外はほとんど情報を持たないまま観始める。

と、モダンなホテルを舞台にしている。

ホテルを舞台と言えば、ラスベガスのホテルのショーフロアーで繰り広げられるメトのリゴレットをどうしても思い浮かべてしまうが、あちらがショービジネスへの置き換えに対して、こちらは暴力団の貸切宴会という風情で似ているようでも相当違う(が、どうしても似たような印象は受ける)。特に、3幕がメトはネオンが見える街道沿いの怪しい店というか街角に対して、こちらはネオンの裏側(つまり屋上)の怪しい集団で、ネオンが装飾となっているだけに近しいものがある。

しかしマントヴァ公の扱いは三者三様で、そこが一番の違いであった。

メトのマントヴァ公はショービジネスのスターなので、彼の回りの女性たちはスターの追っかけ(それだけにジルダが新鮮で、2幕冒頭は本気)、スカラ座のマントヴァ公は本当の公爵なので彼の回りの女性たちは当時の女性たち(それだけにジルダが新鮮で2幕の冒頭は本気)、新国立劇場のマントヴァ公は御曹司らしく女性は取り巻きが誘拐してきた見るからに犯罪被害者(相当価値観が歪んでいるので、ジルダも単にそのうちの一人として扱おうとしている魂胆が演出で示される、2幕冒頭も新しい相手に対する興味というか惜しいところで取り逃がしたという気分を示す演出)。

シナリオからは新国立劇場の演出はうがち過ぎだし、それほど気分が良い演出とも言えない。ただし、セットはうまくできていて、1幕の場面転換に余分な時間がいっさいかからないのは良い点だった(スパラフチーレと出会うのは1階のバー、リゴレットの家は上のほうのフロアーに借りている部屋)。

歌手は誰もが良い。マントヴァ公のキム・ウーキュンはええと驚くばかりの声量で、まずそこで驚いた。これまで4人くらいキムを観たけど、このキムが最も良いキムだ。

ジルダは金属的な声で最初いやだなと思ったが、楽器のようにきちんと演奏するすごい歌手、リゴレットは味があるすごく良い歌手、バスはまた妻屋か(他にバスはいないのか)と思ったらスパラフチーレも凄みがあり声が通り(最初にファーゾルトかファフナーで観たときは声が通らないバスだなぁと感じたのだが、オーケストラの編成に負けただけなのか、どんどん厚みが増しているのか)良い殺し屋だった。

C席8000円弱で、これだけ良いオペラを観られるのだから、まったく良い劇場だ。

(それにしても4階最前列は、手すりを撤去して欲しい。手すりのせいで舞台前面がまったく見えないからだ。大人の劇場なのだから興奮して落ちるばかは想定する必要ないし、あの程度の手すりではいずれにしても落ちるばかを止めることはできない、なんかくだらないエクスキューズなオーナメントだよなぁとつくづくうんざりだ)。


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