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日々の破片

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2015-02-26

_ メトのメリーウィドウ

東劇のメトライブビューイングのメリーウィドウ。

とても有名なオペレッタだが、オペレッタということでバカにしてこれまで聴くことなく過ごして来たのだが、いろいろおもしろかった。

まず、驚いたのは、唯一何度も聴いているオペレッタのコウモリとは全然違うということ。これに比べればコウモリはオペラだ。

レハールの1曲のみで、オペレッタはこういうものだと考えるのは間違いだとは思うが、それでもヨハンシュトラウスがコウモリを書くまで、レハールにはかなわないとオペレッタを避けていたということを考えると、多分ある程度は正しいだろう。

オペレッタというのは、歌つきの劇なのだ。オペラはセリフがある歌だし、それがドイツの連中の手にかかると、管弦楽曲に歌がありたまにセリフで筋立てを説明する音楽となり、ワーグナーで完全に歌がある管弦楽曲として完成した。

ところがメリーウィドウは全然違う。極端に言えば、音楽も歌もなくても筋が十分に進む。歌や踊りによる心持や感情を表現しなくても、セリフと動きだけで十二分に舞台が成立しているのだ。

したがって、最初に聴きながら感じたのは、優雅にくだらない恋のさや当てをほのめかし台詞で進める調子は、とても良く親しんだMGMやRKOのミュージカルだ。

まったく、アステアとロジャーズを観ているようだ。

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もちろん、歌と踊りのないアステアとロジャーズは見る気にならないのと同様に、メリーウィドウから音楽を抜いたらすさまじくつまらないスクリューボールコメディになってしまうだろう。

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間違いなく、ハリウッド黄金時代の源流だ。

バルカン半島の小国の男爵はパリの公使館で舞踏会を開く。お目当ては銀行家の未亡人の財産だ。この未亡人がフランス人と結婚すると遺産はフランスの手に入ってしまう。しかし故国の人間と結婚すれば破産寸前の故国は持ち直すことができる。

彼が白羽の矢を立てたのは伯爵なのだが、この伯爵、かって未亡人が未婚の頃に彼女と随分とねんごろ(少なくとも一緒に朝を何度も迎えていたことが寝ぼけているときに明らかにされる)だったのだが、農民の娘と伯爵ということで伯父に結婚を反対されたという因縁がある。それもあって、フランス人の求婚者を追い払うことは同意するが、プロポーズすることは拒否する。

ここでフランス人の名前がブリオッシュとか非常にふざけた名前なのは、コウモリでもフランス語とフランス人名がネタになっていたが、何か、当時のウィーンの人間が楽しめる要素だったのだろうか。

2幕になると、彼女の豪邸に舞台はうつる。舞台美術では窓の向うにモンパルナスの丘(頂上にサクレクェールの白い建物が立っているのでそれとわかる)が見えて、絶妙にパリっぽさを出している。この幕では架空のバルカン半島の舞踏(どう見てもコサックダンスっぽい)や民謡(森の精ヴィリの歌で、これは実に素晴らしい曲)で埋め尽くされている。

3幕で舞台はマクシムになるのだが、今では高級料理店のマクシムは当時はムーランルージュの舞台があって、しかもバックヤードに無数の小部屋を持つ怪しいクラブだったのかなぁ。いずれにしてもそう書かれている。ここではまったくもってハリウッド映画音楽の書法そのもののカンカン踊りの音楽がテーマになっていて、これが実にしびれる。おれが好きなミュージカル映画そのものではないか。

もちろん、伯爵は未亡人に愛していると告白してプロポーズしてめでたしめでたし。

というわけで、心底楽しかった。


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