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日々の破片

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2015-05-09

_ えどがわの女性がおもしろい

妻が江戸川区聞き書き研究会というとこが発行しているブレチンを2枚ほどもらってきて、おもしろいから読めというので読んだ。

1枚は「80歳まで眼科医を続けて」という引退した眼科医の聞き書き。もう1枚は「95歳の現役女将」という現役の飲み屋のおかみさんの聞き書き。で、どちらもえらくおもしろい。

調べたらWebでも公開されていた。えどがわの女性

どうも、江戸川区の女性参画事業の一環らしい。

こういうのがおもしろいのは、稗史にほかならないからだ。歴史はおもしろいが、特にそれがおもしろいのは、非公式かつある特定の視点の偏りがあり、しかもそこに客観性を持った記述となる場合だ。

その意味で、現在80以上の人間というのは、日中戦争前あたりに生まれて、太平洋戦争、アメリカ占領時代、共産党旋風時代、自社共闘時代、高度成長時代、反米時代=石油ショック時代(国際化時代)、多様化時代、バブル時代、景気後退時代と、実にさまざまな時代を経験しているので、聞き手側を含めてある程度の客観視ができる教養を持つ人間の一代記であれば、つまらないわけがない。

しかも、これまでいろいろ読んだり聞いた範囲では、女性の話のほうが男性の話よりもはるかにおもしろい。この時代を生きた女性は、全方位外交が必要なので、経験が多岐にわたるからだ(その反面、専門的な分野に特化した話題は男性のほうが語れることが多いように思う。単に依頼方法の問題かも知れないが)

良くいわれることだが、専業主婦という職業の樹立は、高度経済成長期に入って、会社員という職業の補完物として誕生したことにあるということが、ここでも確認できる。どちらの女性も働くことを求められて、実際に働いていた(いる)からだ。

女将のほうは、大学に進学したかったが、親に蹴られて勤め始めたので、後になって余裕が出てから早稲田の講義録を取寄せて勉強したとか書いているが、今ならCourseraとかで勉強することに相当するのだろうか(というか、今でも講義録の取寄せとかできるのか?(多分できないと思うのだけど))。

一代記として読むと、特に女将の聞き書きは、具体的なもらった金額の話や、1960年代に近所の人たちのおかげで焼け残れた茅葺屋根の家屋から3階建てのビルに建て替えるまでの(省略が多いが)紆余曲折などまで語っているので、実に興味深い。


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