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日々の破片

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2021-07-25

_ まるごと馬場のぼる展

練馬区立美術館のまるごと馬場のぼる展に行く。

そもそもは中学生(だと思う)の頃、NHKで見た井上ひさしの11匹のねこがおもしろそうで(多分、ちら見したのだと思う)、全体を知りたくて間違えて馬場のぼるの11ぴきのねこと11ぴきのねことあほうどりを買ったことに遡る。

で、おもしろいのは良いがなんかこれは違うと思ったわけだが、それから数10年後に、子供が本棚にあったそれを気に入り、妻も気に入ったので、ぶた、ふくろのなか、へんなねこ、どろんこと残りも全部買うことになった。どころか、歌留多やマラソンのやつも買うことになった。

というわけで、幼稚園の頃に子供が遠足には行かないと言い張り、妻となぜだろうと理由を聞くと、うひあはが怖いからだとわかるとか、へんなねこいいひといいひとという歌留多のセリフが何気なく口をつくとか、子供と一緒に散歩しようとすると先頭はとらねこ大将といいながら子供が先頭を歩いたりするようになるのであった。

というわけで、練馬区立美術館のまるごと馬場のぼる展には親子そろって見に行くことになるのも理の当然。

展示室は3つに分かれていて、すべて隅から隅まで見応えがありまくるため、3時間近く立ったまま眺めることになり、えらく疲れた。

第1展示室は11ぴきのねこで、最初のカラー印刷の仕組み(色ごとに馬場のぼるが原画を描いた)や、原画、そもそもの始まりとなったお城のねこのやつなどで、本が置いてあるコーナーに、件の井上ひさしの11ぴきのねこも置いてあって、おおこれを本当は欲しかったのだと思わず手に取るわけだが、後書きに、新劇の死となぜかそれだけは人気がある11ぴきのねこといったことが書いてあってなかなかに複雑。

その横に、11ぴきのねこの楽譜集があって、「11ぴきのねこ11ぴきのねこ11ぴきのねこがたびにでた」の曲もあって、あ、これじゃんと歌声が蘇ったりする。

というか、うひあはが、なかなか寝ない子供に「はやく寝ないとうひあはが来るぞ」と脅すために作った怪物だとわかっておもしろかった(が、さらに確か第3展示室のスケッチ集で、たくさんうひあはが残されていて、どこまでうひあは好きなんだとおもしろく思う)。

どろんこの最後が他と違うことが説明されていて、逆におれの中でどろんこの印象が薄い理由も想像がついた。

第2部はマンガ家としての馬場のぼる。

マンガ家としての馬場のぼるは1950年代が最盛期なのだろう(もちろん、死ぬまで大人用の政治マンガなどは書いているし、おれも夕刊4コマみたいなのを見た覚えがある)。

で、ポスト君だのぶうたんだのまったく見たことが無いマンガがたくさん。

特に、1970年代に少年ジャンプで企画されたらしい、わたしの子供時代というマンガ家競作シリーズのやつが全編展示されていて、これが実に良い。

中学生(小学生ではないと思う)1年のときの同級生がいつもうさぎを弁当に入れてきて、捕り方を説明する。それを聞いていた2年生に脅されているところに、さらにおっかない3年生が登場し、その3年生と3人でうさぎを捕まえるために奮闘する話で、最後まで実におもしろかった。

その他、子供のころに書いたたんくたんくろうとか(妙に納得感がある)、小学5年のときに書いた折り目がとんでもなく精緻な紙風船とか、ただものではない。で、予科練に入るわけだが、特攻とかせずに(どころか飛行もしなかったらしい。おそらく練習用飛行機すら無くなっていた時期なのだろう)敗戦を迎えられたのは実に日本のために良いことだった。

第3展示室になると、その他の作品ということでこれも見応えがありまくる。

さわりだけが展示されている羅生門の鬼のやつが気になると、最後に本そのものが展示されていたので読んで、なんともいやな気持になったり、かえる?えるの、はえるが実に好きだったり(かえるが2人で、かえるがはえた植物を眺めている。この実に秀逸な画は、展示場の入り口にも描かれている)、しりとりのまど⇒どあ⇒ページをめくってあほうどりと意表をついてりんご⇒ごりら⇒らっぱ……ときて、ことりと思うとこうのとりとさらに意表をつく(11わぁに似た感触だ)とか、実におもしろい。

11ぴきのねこ シリーズ6冊セット(馬場 のぼる)

すごく満足した。


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